BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

♀黄青 ( No.519 )
日時: 2012/09/16 00:21
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: hFu5/zEO)

 たった一度のキスで腰が抜けそうになっている私を助けるように、青峰っちはそのたくましい腕を私の膝裏にあてて支えた。膝ががくがくの私はその好意を素直に受け取る。この瞬間だけは自分の体重の心配なんて宇宙の彼方へと吹き飛ばして、青峰っちの腕へと腰を落ち着けた。
 きゃー、超安定してるー、と青峰っちの体格の良さににんまりしていると「何だよ」と決まり悪そうに青峰っちの眉間に皺が寄る。

「今日は、何か優しいっスね」
「普通だろ」
「ううん。なんかちがうっス。腕とか、いつもはこんなんしないっしょ」
「……そうか?」

 思案するように視線を明後日の方向へと寄せる青峰っち。んきゃー、馬鹿わいい!と私は自分の頬が緩むのを感じた。
 今の青峰っちの脳内は私で満たされている。たぶんの話だけど、でもきっとそうでしょ。目の前にいるのに他の女のこと考えてたら、それはそれでムカつくのが乙女の性って奴です。違うよね、私のことを考えてるっスよね?——確認するみたいに、オレンジに彩られた指先で顎のラインを撫でた。

「あ? くすぐってーよ、誘ってンのかお前」

 途端、不機嫌そうに目を細める青峰っちはやっぱりきゃーわいーい!と仰け反りたくなるレベルである。ちょっと反応してるのも可愛い。動物で例えるなら、にゃんこ?って感じかなと考える。いやいや、私を襲おうとしてるときはギラギラしててオオカミみたい。あ、でも最終的に喘いでるのは青峰っちの方だからにゃんこで正解かもしれない。
 そういえば昨日はどうだったかな、と昨日の青峰っちの嬌声について今度は私が「うーん」と唸っていると、眼下の青峰っちが「おい」と抱き込んだ腰を揺らした。

「お前も今日変じゃねーか。生理かよ?」
「もー!  女の子にそういうこと言ったら嫌われちゃうっスよ! ……あ、そしたら青峰っちのこと私が一人占めできるっスね。もっと言って良いっスよ青峰っち!」
「きめェ」
「ひどっ!」

 顔をしかめて言い放たれた言葉は、恋人に向けるものじゃないと思う。青峰っちの言動の酷さのせいで私も判断が鈍っているけど、確実にアウトっスよね今の。思わず「夜は喘いでて可愛いのに」とぼやくと「死ね」と女子に向けちゃいけない単語が飛び出してきた。だからひどいっス。
 あんまりなので、凶悪な顔つきになってる青峰っちを覗き込み、鼻先を齧ってみた。「うっひ」と青峰っちは飛び跳ねるぐらいに反応してくれたので私のもやもやも収まる。「何してんだ」「痛っ!」はたかれた。

「ぶー、ケチくさいっス……暴力反対っス。せっかく二人きりなのに全然甘くないっス。これは恋人同士としていかがなものかと思うっス。愛が足りねえっス」
「スっスっうるせーよ。口癖百パーセントじゃねーかうぜェ」
「……むぅ、そのまま私色に染まっちゃえば良いんスよ!」

 うがーと抱きかかえられたままゆさゆさと体を揺らすと、メリーゴーランドの出来損ないみたいにリズムのよい動きが生まれる。それでも私を放さずに抱きかかえてくれてる青峰っちマジ天使。
 青峰っちは面倒そうに口を開き、俺を「よちよち」とあやし始めた。

「黄瀬色って何だ、バナナ色?」
「青峰っちの口からバナナって聞くと……何だか無いモンたちそうになるっス」
「お前ほんとまじいっぺん黙れよ」

 そんな可愛い顔してんのによ、と唇を尖らせる私の大好きな彼。
 あぁ、大好き。「いやっスよぉ」と不敵に笑いながら、私は胸元へと青峰っちの頭を抱き寄せた。






■幸せをくりかえすわたしたち





****

たまにはこういうぐだぐだ幸せっぽいのもね