BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- はっぴーばーすでー ( No.532 )
- 日時: 2012/10/09 23:59
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: hFu5/zEO)
- プロフ: スライディング頑張る!
「大丈夫だよ。いつか、君はバスケが好きになるから」
ぐすぐすと惨めに膝を抱えて泣いている俺の頭上から零れ落ちてきた声は爽やかな色を孕んでいて、思わず俺は顔を上げた。まだ腫れてじんじんと痛む両目は涙でにじんで回復してくれない。
何言ってんだ、バスケなんて大嫌いだよ。黒ちんを消えさせちゃうバスケ。峰ちんを傷つけるバスケ。黄瀬ちんを苦しめるバスケ。ミドチンを可哀相にするバスケ。赤ちんを遠くさせちゃうバスケ。桃ちんを泣かせちゃうバスケ。ぜんぶぜんぶ、俺は大嫌いだ。そう言い返してやろうと思ったけど、喉はがらがらで言葉にならない。しょうがなくすんすんと鼻を啜りながら黙り込んでいると、その声は続けて言った。
「嫌いになりたくなかったんだろう。本当はずっと好きで、無理に嫌おうとしているだけなんだろう。安心して。そんな君を理解してくれる人が、いつか現れて、君に言うから。君はバスケが大好きなんだね、って」
いないよそんな奴。だって皆、俺のことを気持ち悪いって言うんだから。背ばっかりでかくて、邪魔で、やる気がなくて、いつも誰かの期待をぶち壊して。やれることをやらずに、趣味もなくて。何を考えてるのかわかんないって、よく言われるんだから。こんな俺のことを理解してくれる奴なんていないよ。理解してくれてた赤ちんも俺の前から消えちゃったし。
「君のその背の高さが、力が。いつか誰かの想いを救うときが来るんだよ。君の存在を望む人達が、将来きっと君の隣にいる。君へ、『生まれてきてくれてありがとう』って笑いかける人達が、いるんだ」
「嘘だ、嘘だよ。そんな人、いるわけがないっ!」
ようやく初めて俺の掠れた声は出て、今まで俺にその言葉を吐いていた人物の顔を真正面から迎えることが出来た。
瞬間。ふわり、と頬を掠めたのは爽やかな風と、甘くて良い香り。
「…………じゃあ、まずは俺から、君にその言葉を言おうかな」
そうして、綺麗な顔をした、黒髪の青年は。泣き顔の俺と視線が合った瞬間、ふわりと嬉しそうに微笑むんだ。
「生まれてきてくれてありがとう、敦」
■10月9日の君へ。
生まれてきてくれてありがとう。君のおかげで僕は、また前へ向けるのさ。
Happy birthday,Atsushi!