BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

メメラギSS ( No.540 )
日時: 2012/10/20 23:37
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: hFu5/zEO)

「まるで僕らは環状線の中をずっと走っているようだねぇ阿良々木君、僕と君の関係は正しくそれなんだよ。環状線、いやぁ自分でもこれほどまでに上手い表現はないと思うね。停車駅も途中下車も僕らの環状線にはない。僕らの感情と、僕らの行いの勘定と、感状としての結末と、管状になった後悔が這っているとでも言えば良いものか。それらがぐるぐると絡み合った一本の線が僕らのこの線路をぐるりと一周囲んでいるわけだね。僕はまだ一応人間で、君は一応吸血鬼。追いかけても追いかけてもその差は縮まることがあっても無くなることはけしてない。指先を掠めたと思ってもそれは違う、幻想だ。相手に近づいたと錯覚しているだけの問題なんだよ。好きな相手のことをわかったつもりでいるのはよくある高校生カップルにありがちなものだろう。相手の知らない一面を見ただけで理解した気になっちゃって、何とまぁ無様なんだろうね。そこに相手の本質がまるまるあるわけじゃないというのに。そのことを忘れて皆は言うんだ、本当の貴方を分かってあげられるのは私だけだと。一種の束縛に近い言葉だね。だけど僕は否定しないよ」


 そこまで言うと、忍野は軽薄そうな笑みを頬に称えたまま、手にしていたミスドのオールドファッションをどこか感慨深そうに眺めて夜空に翳し、


「甘い甘い僕らの環状線さ。少しぐらいの苦味があったって、それはそれで美味しいものだからね。甘さにふやかされた脳内で勘違いをしてみるのも悪くはないだろうよ」


 と、ぱくりとその柔らかい環状線に齧り付いた。
 そうして「ほら、これで環状線じゃなくなった」だなんて嬉しそうに呟いているものだから、ポンデリングを頬張っていた僕は思わず吹き出してしまった。








■環状線からは甘い味がした!







(そうだな、この空洞に何かを詰めて行くのも悪くないねぇ)