BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- 大学生たかみどSS ( No.551 )
- 日時: 2012/11/05 23:30
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: hFu5/zEO)
■ワンコールで息をひそめて、
金曜日の午後十時、と俺たちの間では決まっていた。金曜日は丁度俺の方はバイトが終わり家にいられるし、真ちゃんは研修が終わり一息つける時間帯。後の六日と二十三時間は全てちぐはぐな俺たちの生活。しかしその一時間——午後十時から十一時まではなぜかぴったりとよく噛みあっていた。まるで神様の思し召しみたいだね、と覚えたばかりの単語を電話の向こうの真ちゃんに言ってみると、「そうだな」と意外に素直な返事が返ってきてびっくりしたのはまだ記憶に新しい。真ちゃんも神様って信じるんだなー、と用意したカフェオレを口にしながら物思いに耽った。
一時間というのは短いようで長いし、長いようで短い。「好きだよ」と告げるのに開口一番な時もあれば「俺も愛してるよ」と応えるのに五十九分五十九秒かかる時もある。それを俺はいつまでたっても子供みてぇ、と笑うし、真ちゃんは変則的なのだよ、と少しだけ柔らかい声になる。くだらない話だ、と笑われないレベルには真ちゃんは俺にデレてくれてるってことだろうか。
——ぷるる、ぷるるる。
あえて真ちゃんからの着信音はシンプルなものにしてある。それは以前、べたべたの甘い恋の曲で設定しておいたら「恥ずかしいからやめるのだよ」と本人に怒られたせいでもあるし、やっぱり無機質な音からでも真ちゃんからの愛情を感じたいなんていう俺の可笑しな考えからくるものでもある。いいじゃないか、別に。俺は真ちゃんの愛をいつだって感じていたいのだ。
「はいはーい、今出ますよー……っと」
読みかけの雑誌をほっぽって、俺はちかちかと着信の文字を表示している携帯電話に手を伸ばす。勿論のことだが画面には「真ちゃん」の五文字が揺れ動いていた。たったそれだけで胸が高鳴りを覚えたのは、何だか恥ずかしいので本人には言ってやらない。
そしてまた、彼への「愛してる」と一番最初に伝えようと、俺は冷たい空気を吸い込んだ。
***
遠距離なたかみど大学生、いいよね