BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- ゆりゆり ( No.562 )
- 日時: 2012/12/01 23:06
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: hFu5/zEO)
- プロフ: アーモンド入りチョコレートのワルツ
「なんでそんな、最近、さらさらしてるの」
彼女の言葉はへにゃへにゃの私の脳内には唐突過ぎた。柔和な笑みを取り払い、その場を去ろうとしていた私は慌てて彼女用の人懐こい微笑を頬に塗りたくり振り向く。からからの喉から、努めて明るい声を絞り出した。
「さらさらって、何? 髪の毛のことー? ふっ、ついに××ちゃんも私の髪の毛がさらさらりんぐなことにお気づきになられたようねっ!」
「違う、髪の毛じゃない。……ああ、もう」
私の軽口に彼女はすっかり調子を崩されてしまったようだ、気まずそうにそのショートヘアをわしゃわしゃと掻き乱す。貴方は可愛いんだから、そんな風に髪の毛をかいちゃ駄目でしょ。そう言おうと思ったが「つけあがるな」と私の心の一部が冷たく言い放った。
彼女は何も言えなくなって、呼び止めてごめん、じゃあね、と私の耳に心地よいトーンで呟いた。うん、ばいばい。私も、何も気付かなかった振りをして手を振る。そしてひんやりとした冷気を吸い込み、あぁ、また一段と寒くなったなぁなんてマフラーを巻きなおした。指の先まで冷え切っていて、ローファーを履いているという感触が曖昧になる。
「……ねえ、今のわたし、さらさらじゃない?」
一人で階段をリズムよく降りながら、嘲笑めいた口調でさっきの言葉を繰り返してみた。案外その言葉は今の私の彼女への態度に、ぴったりと当てはまる。
そうだね。今の私は、さらさらかもしれない。
だって、貴方に関わらないことに決めたんだもの。
「どろどろの感情を取り除いたら——そりゃ、さらさらにもなるよねえ」
■マグマ入りチョコレートの、ワルツ?
彼女に関わるもの全て彼女への思いを全て私は遮断することに決めた。彼女の光はあまりにも私を魅了しすぎていてそれは私以外の人間さえも惹きつけているということであり、つまり私が彼女の一番になろうとしても誰か別のやつが彼女を狙い彼女の一番になることもあるのだ。私以外の誰かが彼女の一番になるのを見るのは、私はもう二度とごめんなのだ。だから私はこのどろどろと熱い恋とも嫉妬とも呼べる感情を全て放棄し彼女へはただの知り合いとしての感情を優先することに決めた。そう自分の中で決めてみると私の世界はとても息がしやすくなり楽になったんだから、何とまあ私のあの感情は重苦しいものだったのかと、私は冷たく甘いだけになってしまった感情の残り滓を手にしてさめざめと泣いている。
***
さらさらしてるなら、それでいいんですけどね