BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

■殺し方を知らない ( No.570 )
日時: 2012/12/17 22:29
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: .XV6mGg/)
プロフ: 宮→←緑←高








 わざわざ緑間がいないところで言いに来る辺り、こいつは頭が良い。自分の汚いところを見せたくないのは人類共通みな同じ。俺だって自分の醜悪な面をあのどこまでも美しい男に見せたいかと問われれば素直に首を横に振る。それはあいつの綺麗な顔を悲しみに染めたくないだなんて理由じゃなく、ただ単純に、先輩としての俺のプライドだ。才能とか、圧力に潰された——馬鹿みたいに崩れきったプライド。

「アンタは、何でそうすんだよ」
「先輩に対する口のききかたがなってねーぞ、高尾」
「俺はアンタみたいに突き放さないのに、俺は、アンタより真ちゃんがずっと好きなのに、大切にしてるのに」

 駄目だこいつ、聞いちゃいねぇ。人気のない部室には高尾の硬質な声色が響いていて、先ほどまでの部員同士のじゃれあいとか、木村の怒声とか、そういう煩さがどこにもない。静かなのはいいことだが、静か過ぎるのも嫌いだった。
 壁に追い詰められた状態は、果たして先輩と後輩という関係上正しいものなのだろうか。いや、正しくない。先輩が後輩を追い詰めていたらいじめかと思うし、逆なら完全に舐められているだろう。追い詰められている側である俺は、浅く息をついた。

「……お前が緑間を好きだからって、俺がアイツを好きになるなんて理屈どこにあんだよ、あぁ? 一年坊主の恋愛遊びに、三年の俺らを巻き込むなや」
「恋愛遊び、って」
「言葉通りの意味に決まってんだろが。コートの上でもみじめったらしく、緑間と俺の方を見やがって。わかってないとでも思ったか? 鷹の目も形無しだな」

 くく、と嘲るように笑ってみせれば、高尾はその表情を絶望にゆがめた。一年生だ、まだまだ幼い顔立ちが残っている。幼い顔にひどく不釣合いなその歪みは、どうにもこいつには似合わなかった。
 絶句している高尾の肩を、軽く押す。力が抜けているのか、あっさりとその細い体は退路を空けてくれた。遠慮なく俺はするりとその身を交わし、素早く出口へと駆け寄った。
 繰り返し言うが、俺は一年坊主の恋愛遊びに付き合っている暇はない。余計な感情など捨てて、受験に専念せねば。

「…………宮地、先輩」

 後はドアを閉めるだけ、というところで、弱弱しい声が背後からかけられた。真実を言い当てられて動揺しているであろう後輩の声は、さっき俺を問い詰める際に見せた怒りはすっかり失せている。
 もう何も、言われることはなかったと思うんだが。内心イライラしながら、俺は外の空気にぶるりと背を震わせて応える。


「何だよ、これ以上ふざけたこと言うなら——」「——真ちゃんのこと、好きですか」「大嫌いだ馬鹿野郎」


 間髪入れずにそう言い、俺はくだらない応酬から逃れようと今度こそ部室のドアを閉めた。今日はやけに冷えるな、と首元のネックウォーマーを直す。
 その時だった。唇が切れ、そこに血が滲んでいることに気付いたのは。










***

宮地さんはきっと自分の恋愛感情の殺し方を知ってるけど、高尾君はまだ自分の感情の殺し方を知らないんだろうなーって。緑間君は殺したふりをしてるけど、殺さなくていいよって言われたらぼろぼろ溢れちゃうタイプップ(‘ω‘