BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- ■この世界を殺してくれたらよかった ( No.596 )
- 日時: 2013/02/03 03:17
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: .XV6mGg/)
- プロフ: 青黒青?/よくわからない
肉を打つ鈍い音で目が覚めた。
ぱちり、なんて可愛いもんじゃない。それこそ相手の鼻をへし折ることを最優先とした重い一撃、の音。こんなに派手な音を響かせているのだから、やられた方は血が出てもおかしくないはずだ。
——一体、誰がこんな音を?
まどろみに浸りながらそんな疑問を抱く。体は未だ睡眠を求めているのか妙に気だるい。体のだるさを逃がしたくて大きく深呼吸をする。すぅ、と吸い込んだ空気には鉄の香りが含まれていた。鉄——いや、血の香り。やっぱり誰かが、怪我をしてるんじゃないのか。
バキッ、と今度は思い切り蹴りを入れる音が聞こえた。骨が折れたんじゃないかと疑ってしまうほどの音。(いやいや……この音は、やばいだろ)さすがに危機感を感じて、重い上半身を起こした。
重い目蓋を見開いて、音を発する主を探る。そいつはすぐに見つかった。だって、そいつは血まみれだったから。ぼやけた視界の中でも鮮明に、赤色が映えていた。
そいつは腕から膝辺りかけて真っ赤に血で染まっている。背はそこまで高くなく、線が細い。淡いブルーの髪も血で汚れているのか、襟足がうなじにぺたりとはりついている————ああ、テツだ。俺はようやくそいつがテツであることを知った。
テツは肩で息をしていた。わなわなと震える拳もやはり血で濡れていて、この生臭い香りはアイツが生み出したのだということを察する。
「……テツ、何で……」
——なんで、そんな風に血まみれなんだよ?
現実離れした光景、血に染められたアイツ。遠くにいるテツに声をかけようと、俺は腰を浮かしかける。
すると、同時にテツも動いた。血だらけの右腕が不自然に挙げられる。よく見ると、挙げられた右拳には何か銀色の棒状のものが握られている。それは怪しく光っていて、まるでナイフのような。「……は?」ナイフ、と滑らかに出てきた自分の考えに驚き、声をあげてしまった。
俺の声に気付くことなく、テツはそのナイフらしきものを、高々と振り上げて——
「——って、何してんだテメェは!?」
反射的に駆け寄っていた。急に立ち上がったことで膝に嫌な痛みが走ったけど、気にする間もない。遠いと思っていた距離は案外近くて、俺の脚だと、テツがナイフを振りかざす前に着くことができた。
ぶん、と大きく振りかぶられた右腕を掴むと血で滑った。上手く掴まえられなかったせいか勢いを殺せない、慌てて両手で押さえ込んだ。ぬるりとした感触が手の平に伝わり、そしてテツの動きが止まる。
安堵の息をつき、出来るだけ険しい顔を作り、俯いているテツを睨んだ。隣にいる俺になんて目もくれず、テツはぼんやりと封じられた右腕を眺めている。虚ろな視線に苛立ちが湧く。
「何やってんだ!! こんな、ナイフとか……危ねェだろーが!」
「殺すんです。邪魔、しないでください」
「殺すって誰をだよ」
「僕を、です」
「ハァ!? テツ、お前、」
俺の制止も聞かず、テツはまたナイフを振りかざす。「だから、危ないっての!」ばしっ、と手を叩き軌道を変えると、ナイフはするりとテツの手から離れていった。その際に銀色の刃は俺の手首を掠め、傷を作った。
熱にも似た痛みが手首を伝い、そして血に変わり地を濡らす。「っつ……」この野郎、とテツに怒りをぶつける前に、先に向こうが言葉を漏らした。
「どうして、止めるんですか」
声はひどく落ち着いていて、そして冷め切っていた。憎悪だけを煮詰めた、薄暗い瞳でを凝視する。頬に出来ている切り傷からはまだ新しい赤色がのぞいていて、見ているこっちが痛い。
「当たり前だろーが! こんな傷だらけになって……真っ赤じゃねぇか、早くさつきにでも手当てしてもらえよ!」
「……今まで僕を放っておいたのに、今さら? 今さらそんなことを、君は言うんですね」
血のついたからからの唇を動かし、テツは言葉を続ける。
「僕を置いていったのに。僕の大好きな、君のバスケがある世界を、君は簡単に閉じてしまったのに。君が閉じた世界を僕がどうしようが、関係ないじゃないですか。殺しちゃいけない理由なんて、無い」
「お前が……お前が殺そうとしてんのは、自分だろ! 別に俺は!」
「殺してくれたらよかった」
乾ききった声が、俺の反論に被せられた。足元に転がっているナイフを一瞥し、テツは淡々と言う。その間にもテツの腹からはじくじくと血が滲んでいる。痛くないのか、と聞くのも躊躇うぐらいテツは無表情のままで。
「この世界を、殺してくれたらよかった。君が愛したこの世界を、僕が愛したこの世界を——そんな風に見捨てないで欲しかった。どうせ見捨てるぐらいなら、その世界にいた僕ごと殺して欲しかった」
血が滲む唇は弧を描き、テツは微笑を零す。
傷だらけの笑顔を前に——俺は額に冷や汗が浮かぶのを、感じた。
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最近よくわかんないの書いてしまう
そしていずみことロス♀アル書きた過ぎて
でもジョジョとかささみさんとかリトバスとかも書きたい不思議
