BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

VD詰め/K ( No.608 )
日時: 2013/02/14 23:07
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: .XV6mGg/)

■バレンタインデー短編詰め込み(多々尊







・多々尊/どちらの意味でとればいいのか

「おい」
 キングが俺に声をかけてきただけでも珍しいのに、まさか何かをくれるだなんて思ってもいなかった。俺が振り返った拍子に放られた、赤いリボンのついた箱。突然だったから俺はそれが何かということを観察する余裕がなかった。手のひらに少し余る程度の大きさの箱は、揺すると中からかさこそと音がする。
「……あんまり揺らすな、中身が寄る」
「あ、ごめんごめん——っていうかこれって、もしかして……チョコレート?」
 その問いには答えず、キングはふいと顔を背けた。決まりの悪そうな顔で、残り少なくなったターキーが入ったグラスを呷る。あぁ、とその一連の動作から察した。この中身は、チョコレートなんだね。
「キングも一応、行事とか覚えてるんだね」
「そうでもねぇよ」
「え?」
「今日は、テメェの誕生日だろ。そんだけだ」
「…………あぁ、そういうことか」
 確かに今日は俺の誕生日だ。ふむ。つまりこれはキングから俺に向けての(希少な)誕生日プレゼントなわけだ。そう考えるとこの箱の中身は一瞬でかけがえのないものへと変わる。
 ——あのキングが、俺のためにチョコレートを……ねぇ。
 一人チョコレート売り場に立ち尽くすキングを想像すると、少しだけおかしかった。
「ねぇキング。このプレゼントの中身がチョコレートで、しかも今日が二月十四日ってことは、さ」
 俺の言葉に、グラスの底を眺めていたキングが金の瞳をこちらへと向ける。蜂蜜が蕩けたような、とろりとした眼差し。その眼差しを向けられたくて、八田たちが東奔西走してることを知らないんだろうなぁ、キングは。
 頬に笑みを載せて、俺はキングへと先ほどの箱を翳した。
「これはキングからの愛の告白でもある——なんて、俺はちょっとぐらい自惚れていいのかな?」
「…………好きにしろ」
 口角をわずかにつりあげて、キングは伏し目がちにそう笑った。冗談もたいがいにしとけよ、と続けたキングの耳はほんのりと赤いことに気付かない振りをして。俺は「ありがとう」と言ってキングへと抱きついた。




・出尊/きっと愛に等しい

「……甘ェ」
「なら食うなや!」
 この一時間、チョコしか口にしていない。息をつく暇もないほどのハイペースで消費しているはずなのに、目の前のチョコレートの山は消えてくれない。どれだけこいつはモテてんだ、と本人にじと目を向けてみたが、本人は自分に向けられた好意をただの友情としか思っていない馬鹿野郎だ。俺のじと目にも半分キレ気味に「だから何で自分のチョコ食われとる俺が睨まれなあかんのや!」と反論してきた。答えるのも面倒だ。十五個目のブラウニーを頬張り、自らの口を塞ぐ。
 ——あー、甘ったりぃ。
 俺は甘いもんは平気な方だ。だが、この量は明らかにレベルが違う。甘党だとか、そういう理屈で片付けられない量だ。でも全て食べきらなくてはならないし、一欠片でも草薙に食わしてやりたくない。結果こうして茶色の塊とタイマンを張っているってわけだ。……チッ、どうしてこうなった。
「……草薙、水。喉が焼ける」
「そんなにたくさんチョコ食うとるからや阿呆……! お前は何を目指しとんのやほんまに……」
「いいから、水」
 繰り返し催促をすると、草薙は「はいはい」と額に青筋を浮かべたままグラスに水を注ぎ手渡してくれた。ねっとりとした口内に冷たい水を含み、嚥下する。そんな俺を呆れたように見つめ、草薙は肩を竦めた。
「ほんま、そんなに食べとったら体がチョコになってまうで? 尊……お腹空いたんなら何でも作るわ。せやから、そんなに食べるのやめとき。体に悪いやろ」
「…………それ、いいな」
「は?」
「お前のチョコになってやってもいいぜ、って話だ」
「何やそれ。誘い文句か? ……誘い文句にしてはえらい男前やけど」
 苦笑いを浮かべ、草薙はふっと肩の力を抜いた。そして「お前はほんまに」といつものようにぶつくさ言いながら、俺の頭にぽんぽんと手をやった。温かい手のひらを素直に受けていると「猫みたいな奴やなぁ」とふんわりと微笑まれる。
「俺のためにチョコになってくれんのは嬉しいけどな、やっぱり食べすぎはよくないわ。とりあえず、一旦食うのやめ。晩御飯にしようや」
 ——そんなもんより、もっとうまい飯作ったるから。
 そう言うや否や、草薙は素早く俺が咥えていたチョコレートをひょいっと取り上げた。あまりに早くて俺は瞬きをすることしか出来ない。
 きょとんとしている俺を見て、草薙は可笑しそうに口元を綻ばせた。
「ほら、口元ついてんで」
「……うるせェ」





・美猿←礼+世/ください

「バレンタインデーなんてな、お、おおおおお女の行事だろ! チョコレートなんてコンビニでも買えるし草薙さんの作ったトリュフの方がぜってーうめェしよ。そんな、お、女の手作りとか、絶対下手だろ!? ていうかチョコなんて甘ったりぃのはな、どっちみち俺には合わねーんだよ。俺が貰うのは尊さんからのあの熱い絆の炎だけで十分だ! 俺たち吠舞羅のメンバーはな、チョコなんていう物だけの絆でつながってる訳じゃねーんだよ…………俺たちは! 吠舞羅は! 物質も何もかもを越えた絆っていう炎でつながって——」「結局俺からのチョコはいらないんだな?」「——って誰もそんなこと言ってねェだろクソ猿!」
 どっちなんだよ、と俺は指先まで真っ赤になっている美咲を鬱陶しそうに眺めた。チョコレートぐらい素直に受け取れないのかね、この童貞は。
「欲しいなら欲しいって言えよ。俺は優しいから、童貞な美咲ちゃんにも優しくチョコプレイでもしてやるよ」
「(ブチッ)……テメェ、クソ猿……何べん言やぁわかんだ……下の名前で呼ぶんじゃねぇ!! ぶちかますぞ!!」
「いいねェ……やっぱり俺たちはそうでなきゃなぁ、みィ、さァ、きィー? バレンタインデーだから何だっていうんだ……もっと楽しいことが目の前にあるってのに、なァ?」
「……上等だ、さっさと刀抜けや。地べたに這い蹲らせてやんよ!!」
「ふん、言われなくてもすぐそうしてや——————あっ」
「あ? どうした猿、さっさと刀準備しろよ」
「チョ…………チョコが」
「は?」
「チョコが邪魔で、サーベル抜けない……」
「…………それ、邪魔なら……おっ、俺が——俺が貰ってやっても、かかかか構わないけど?」
「えっ……? み、美咲っ……!」


「淡島君、総員抜刀で」
「室長……あの、目から血が流れて……」
「私に構わず、さあ。抜刀です」
「室長。それサーベルじゃなくて包丁ですよ」
「覚悟の上です」
「どんな覚悟ですか!? ちょっ、誰か宗像室長を止めなさい!! 日高、榎本!! 早く来なさい!」








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ほのぼの書きたかった
次は黒バス詰めですかね時間こい時間