BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- VD詰め/黒バス2 ( No.610 )
- 日時: 2013/02/15 00:11
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: .XV6mGg/)
・黄青
青峰っちはそりゃぁモテる。帝光の頃もそりゃあモテたけど、高校生になりがっしりした体つきになり余計に女の子がキャーキャーし始めた。中学生までの女の子はたいてい綺麗な顔立ちの俺みたいな奴を好きになるけど、高校生になると好みはだいぶ変わってくる。頼りがいのありそうな、ちょっと無愛想な青峰っちの方が気になる子も増えてくるものだ。まぁ青峰っちに頼りがいなんてないけどね、と俺は裏で舌を出している訳だが。
「……」
「いやー、お互いお疲れ様っスね」
「……まさか俺もお前みたいな状況になるとは思ってなかった……」
駅の前でぐったりとしている青峰っちを保護して連れ帰ってきたのはほんの一時間前。青峰っちは基本軽装なのに、今日はなぜか両脇に紙袋を四つほど抱えていた。遠目からでもその中身はラッピングされたチョコレートだってことはわかった。
たまたま俺もモデル仲間の子たちからチョコを貰った帰りだった(ちなみに俺は五つ袋を抱えていた)ので、ついでだからどうぞと疲れた様子の青峰っちを自宅に招いたのである。別にバレンタインデーだから、とか、やましい気持ちがあった訳がないわけでもない。
「うっわ、お前の方が中身凝ってね? ゴディバとか、何か外国のもあるしよ。俺なんて手作りばっかだぞ、しかも何かゴテゴテしたの」
「あー、これ社会人のお姉さんたちから貰ったやつっスからねぇ。……っていうか、それはデコレーションっていうんスよ青峰っち。最近の女の子たちは、チョコレートをカラフルにするのが流行なんだって」
「アメリカの菓子かよ、面倒くせェ」
とか何とか言いながら、青峰っちは自分宛のチョコレートをまた一口齧った。薄い唇に挟まれた棒状のチョコレートに、俺の中に欲望やら何やらがむくむくと首をもたげるような、そうでもないような。チョコレートみたいな甘いものを食べる青峰っちは可愛いとは思う。
俺は熱狂的なファンの髪の毛や愛液が入っていそうなものを自ら望んで口にする趣味はない。青峰っちがチョコを頬張る姿をほほえましく見つめながら、後で全部捨てようと決意した。
「……あー、甘っ。おい黄瀬、コーヒー。お前スタバの高いやつ、この前オチューゲンだかオセーボだかで貰ってただろ。早く淹れろ」
「アレはモデルの先輩からのプレゼントっス。……ちょっと待ってて、すぐ淹れるから」
「おー。頼むぞ忠犬黄瀬ェー」
「誰が犬っスか、誰が!」
キッチンにたち、手早くコーヒーの準備をしていく。その間も「甘い甘い」と呟きながら青峰っちは手元のお菓子を消費していく。何ていうか、ブルドーザーでも見てるみたいだ。俺だったら絶対胸焼けして、しばらく寝込むね。
コーヒーを良い香りに気付いた青峰っちは、一瞬手元から視線を外し、カップを持った俺へと顔を向けた。「はい、どうぞ」と俺は営業スマイルと一緒にカップを手渡す。その際にクランチを口に放り込み、青いカップを受け取る青峰っち。口の端にチョコついてるよ、と思ったけど可愛いので言わないでおいた。
「……うあー、甘いわ。こんなにチョコ食ったの久しぶりかもしんねェ」
「そんだけ食べてようやくそれっスか。俺だったらそんなに食えねェっスわ……」
「そうか? あー、塩辛いの食いてー」
「まだ食うんスか!?」
俺が引き気味に空になった包装紙を眺めていると、青峰っちは「そうだなー」とコーヒーを口にしてぼやいた。
「何か、甘いのはしばらくいらねェな。一週間ぐらい、ずっとマジバだけで生きてけるわ俺」
脱力したように言い、苦しいのかネクタイを緩める。チョコの甘さで飽和されたのか、と思うぐらい今の青峰っちには鋭さのようなものがなかった。お腹がある程度満たされ、眠くなったのかくあぁと大きく欠伸をする。あぁ、可愛いなぁ。それだけ可愛いといじめたくなる。
唇の端を舐め甘さの余韻を楽しんでいる青峰っちに、俺は心底残念だというように溜め息をついてみせた。
「あら。そりゃ残念」
「あァ? 何でだ?」
「……だって俺、これから青峰っちにとびきり甘い言葉吐いて、甘ったるい時間過ごそうかと思ってたっスから。青峰っちのことどろどろに甘やかしちゃおうかなー、なーんて」
俺の言葉に、青峰っちの顔に火がついた。青峰っちは案外勘の良い方だから、俺が何をしようとしてたかってことを想像出来たのだ。青峰っちは浅黒い肌をしてるけど、それでも赤くなったことは傍からわかる。にこにこと人の良い笑みを浮かべて、トマトみたいな青峰っちをしばし観察する。可愛いなぁ、食べちゃいたいぐらいだ。
しばらくして、青峰っちは落ち着いてきたのか(それでも頬の朱色は完全には消えていないけど)、俺から視線を微かに逸らした。「うー」とか「あー」とか口の中でもごもごと言っているようだったけど、小声で呟いた。
「……いる」
「えっ?」
「テメェのその、……甘いやつは。特別に、貰ってやらないこともねぇ」
そう言ってむくれた青峰っちの横顔が、どれだけ愛おしかったか。
*****
あまあまい黄青っていうか14日過ぎたよお母さん