BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 【色々】Hello,Microcosmos!【短編】 ( No.615 )
- 日時: 2013/03/18 23:54
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: QGJGVn1c)
- プロフ: 何が言いたいんや尊
言葉を詰める。どんな言葉か種類は問わない。大切だったものも、意味のないものも、楽しく思えたものも、悲しく感じたものも。
ごたごたと飾り立ててしまったものは丁寧に自分の本心だけを残して詰めてしまうことにする。あまりにも足りなかった言葉には、今の自分が出来るだけの処置をして完成された言葉として詰める。時々昔の自分の鋭い言葉に指先が傷つきそうになるけれど、その時は軍手をしてやり直す。血が滲んでも、今の自分なら絆創膏を貼る余裕がある。だから一旦大好きなオレンジジュースを飲んで、一息ついて。そうしてまた詰める作業を始める。ゆっくりと、スローテンポで、マイペースに。
「その中には嘘の言葉も入ってるんじゃない?」
「そうだよ」
「そんなものを自分の言葉なんて言ってもいいのかなぁ」
「大丈夫だよ。嘘をついた私も、私だよ」
時折、背後から無邪気な声が耳をくすぐっていく。こそばゆいのは苦手だから、さっさと返事をして作業に集中する。背後の影は私の問いに不満げに頬を膨らましていたけど、やがて諦めてどこかえ消えうせてしまうだろう。集中する。自分の手の中に残ってる言葉は、どう箱に詰めるものなのかを小さな脳みそでひたすら考える。最近は考えるのに疲れて作業をやめちゃうことが多いけど、やめるならやめるなりに、ギリギリまで一生懸命考えてみる。
「その手が握ってるのは、本当は言いたくなかった言葉なんじゃないの?」
「そうだよ」
「そんなものを自分の言葉なんて言ってもいいのかなぁ」
「大丈夫だよ。その時の本音も、一緒にしておくから」
また背後から声がした。耳につけたイヤホンから流れてくる音楽よりも、はっきりと届いてきた言葉。私はそれに微笑みを返し、手元の言葉ともう一つの色違いの言葉を手に取り紐で縛った。二つセットにされたその言葉たちを箱の中に放る。からころと音をたてた言葉たちはまるで元々そこにあったかのようにしっくりと箱に馴染んでいた。その様子に満足し、私は再び作業に戻る。
「君の横にあるのは、今まで告げられなかった言葉じゃないかい?」
「そうだよ」
「そんなものを自分の言葉なんて言ってもいいのかなぁ」
「大丈夫だよ。言えなかった分は、いつかのためにとっておくから」
横に重ねていた言葉たちは、ビニールに入れて丁寧に空気を抜いて、湿気たりカビたりしないように処理しておく。手間をかけて、今までの自分の気持ちが腐ってしまわないようにする。その時感じた気持ちを忘れてしまわないように、もう一度刻み付ける。
時間をかけて、言葉を詰めていく。詰めようと思えるまで時間の方が多いくらいだけれど。
今度は箱が腐らない程度にしておきたいな、と苦笑しながら。きっとこれからも、私は言葉を詰めていく。
■きっかけの節目
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何も消えないけど、せめて残ってる分はどうにかしたいです
明日は終業式です