BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

あまあまシージョセ♀ ( No.621 )
日時: 2013/03/31 09:58
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: QGJGVn1c)

 きらきらと反射する彼の金髪が、真っ青な空の色とのラインを曖昧にした。
 道行く女をみんな虜にしてしまうムカつくほど整った顔立ちと、無駄の無い筋肉が備わった肉体。見た目だけでももうお腹いっぱいだというのに、口を開くともうすごい。相手の女をメロメロにするための言葉がマシンガンみたいに出てくる。かわいいだのきれいだの——要約すればたかがそんな言葉なのに、バリエーション豊富に様々な表現で歯の浮くような台詞を言ってみせる。

「……女っつーのは、男に可愛いっていわれたら、その分可愛くなるーって言うよなーッ」
「何だ、急に突拍子のないことを」

 隣で地図を広げているシーザーちゃんは、ようやくあたしの声に反応して顔をあげた。その時にあの宝石みたいな透き通った瞳とばっちり目を合わせてしまい、慌てて目をそらす。シーザーちゃんは、本当にムカつくぐらいイケメンだ。そして、綺麗だ。
 羨ましいねェ、と素直に感嘆する。この外見なんだから、黙っていても女が寄ってくるのは当然のことだ。何であたしみたいながさつなのに惚れてんのか、本当に理解出来ない。シーザーちゃんぐらいの有料物件なら、あたしなんかよりずっと良い子と付き合えるだろうに。

「んー。だからシーザーちゃんのとこには、可愛い子がいっぱい集まってくるのか、って思ってよー」
「……意味がわからん」
「だからよォー、シーザーちゃんに綺麗とか可愛いとか、そういう魔法みてーな言葉をたくさん言われる度に、その子らはもっと褒められたくて綺麗になる訳だよ。そんでもっと自分を磨いて、そこでまたシーザーちゃんに褒められるためにお前に近づく。そんなことが繰り返されたら、最終的には可愛い子がお前に寄っていくことになるだろ」

 苦い顔をし、再び地図に向き直るシーザーちゃん。
 あたしが身振り手振りを行使して伝えてみても、シーザーちゃんは地図に集中するばっかりて視線すらくれない。「あぁ、そういうことか。くだらん」顎に指先を添えたまま、これから行く映画館への道筋にお熱だ。カノジョよりも地図の方が大事なんて、女タラシのこいつには珍しい。それほどあたしは女という魅力がないものか。

「…………へいへい、考え事の途中に失礼しあしたー」
「何いじけてるんだ」
「別に」

 何でもないようなシーザーちゃんの横顔に、気持ちがささくれ立つのがわかった。おざなりな返事を残し、あたしはこちらを赤い顔をして眺めている女二人組を横目で見る。二人ともシーザーちゃんの顔にハートを打ち抜かれたようで、きゃあきゃあと騒いでいる。
 ふわふわの亜麻色の髪。守りたくなるような細い肩に、白くなめらかな肌。可愛いが似合う、女の子って存在。「あーあ」思わず、本音が洩らしてしまう。

「……あたしも、あんな風に可愛くなりてェな」
「とっくに可愛いから、大丈夫だろ」
「は?」
「俺が魔法をかけるまでもない」

 それだけ言って、シーザーちゃんは立ち上がった。ぽかんとしているあたしの手を引き「映画よりお前は食い物の方がいいだろ」とさりげなく行き先を変更したことを知らせる。「近くにおいしいジェラートとパフェがある。そこに行こう」
 確かに、長ったらしい恋愛映画を見るよりも美味しいジェラートの方がいい。こくこくと頷くと、シーザーちゃんは嬉しそうに微笑む。薄い唇がわずかに綻び、「行くぞ、ジョジョ」とあたしの名前を軽やかに呼んだ。
 









■魔法なんていらない!







(なんか、すげー大事なこといわれた気がするんだけど……)
(気のせいだろう)






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あっまあまシージョセ♀ちゃんかわいらシージョセ♀