BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

■うそだよね ( No.622 )
日時: 2013/04/30 22:50
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: eNPK8IuO)
プロフ: 美←←猿




「お前と吠舞羅で過ごした時間なんて、つまらなかったよ。毎日毎日ヤンキー共の喧嘩に巻き込まれて、目をつけられて。平和に生きようとしてた俺にとって最悪の状況下だった」
「お前が中三の秋に買ったゲームソフト、あれほんとクソゲーだったわ。ストーリーも支離滅裂だし、戦闘シーンはすげーダサかった。すぐにクリアして、つまらなかった」
「後、あの漫画だけど、あれ現実味無さ過ぎ。いつの時代だよって感じの絵柄だったし、展開もすぐ想像出来た。お前は飽きっぽいから知らないだろうけど、あの漫画三巻目が出てからすぐに終わったぜ」
「俺の好きな曲に似てるって進めてきたバンド、すげー微妙だった。中二臭い言葉ばっか並べて、どっかからパクってきたんじゃねぇのってぐらいありきたりなリズムで。しかもギターがうるさい。かつぜつが悪すぎて歌詞も聞き取りにくかった」

 暗闇に言葉を零していく。
 お前はもう俺とは会いたくないだろう。お前はもう俺と会う気なんてないだろう。
 とても深い深い暗闇に落っこちてしまった俺の方を、お前はもう見てくれない。飛沫をあげて沈んでいく俺を見てみないふりをして、そうして自身の立場に留まろうと必死だ。
 借りパク、つまんない、微妙——なあ、この言葉はどれもいけないのか?

(俺は、お前の生き写しなんかじゃないのに)

 きっとそう聞いてみたら、お前は怒った顔で「当たり前だろ」と反論してくるに違いない。お前はもう俺とは会いたくないんだろうけど、お前はもう俺とは会う気はないんだろうけど。それでも、あの幼い顔を歪めて反論してくるに違いない。
 だって、お前はひどく優しいから。とても深い深い暗闇に落ちてしまった俺の方を今は見向きもしないけど、俺が本当に助けを求めたら、その優しさで俺を包んでくれるんだろう。
 昔の優しいお前にもう会えないなんて、いつ誰が決めたのか。きっと俺が求めたら、お前は昔の八田美咲になって戻ってきてくれる。伏見猿比古と八田美咲で完結されていた世界は、戻ってくる。お前は優しいから、俺はそう確信出来るんだよ、八田。

(ああ、会いたい)

 中学生の頃に戻って、あの美咲に会いたい。どこまでも愚かで、俺の世界の王様だったお前に会いたい。夕暮れに横顔を染めて楽しそうに笑うお前に会いたい。会いたい会いたい会いたい。会いたい、会いたいよ、美咲。
 いつか、お前に会いたいよ。







(なんて、うそだよ)










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「うそだよね」/想太

大好きだから、全部否定するの