BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- 幽霊院→4部承 ( No.629 )
- 日時: 2013/04/01 23:08
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: QGJGVn1c)
- プロフ: 花承のライトなはなし
「承太郎は優しいね」
「……はぁ」
仏頂面の君にそう笑いかけると、眉間に皺を寄せて帽子の鍔を傾けてしまった。はあ、と深いため息の原因は、つないでいる小さな手だろう。承太郎の大きな手に対して、まるで人形みたいに小さい手。手の主である小さな女の子は、涙でべしゃべしゃの顔で飴玉を頬張っている。
その飴玉は、確か君がポケットにしまっておいたものだ。君よりも若い“叔父さん”から貰った、いちご味の飴玉。君には似合わなくて、僕は少しだけ笑ってしまったよ。
「おじさん、ごめんなさい」
「何がだ」
「えみが、おかあさんとはぐれちゃったから……」
「……別に謝ることじゃあない。人が多かったんだ、しょうがない。ほら、ハンカチで顔を拭け」
「うん、ありがとう、じょーたろーおじさん」
星のアップリケのついたハンカチを手渡すと、女の子は花開くように微笑んだ。その微笑みを自分の娘の笑顔と重ねたのだろう、君は一瞬だけ切なそうな顔をした後、優しげに笑い返した。あれだけ高校生の頃は笑えなかったのに、時間というものはすごい。
君は相変わらずかっこいいから、女の子の方もその笑顔で恋に落ちてしまったようだ。かっと頬が赤くなって、もじもじとそっぽを向いてしまった。(やっぱり、小さくても女の子は女の子なんだね)傍で見ている僕は苦笑する。君は鈍感だから、気付いていないらしい。
「じょーォたろーさァーん!! そいつのかーちゃん、見つけてきましたァーッ!!」
すると、背後から若い男の子の大声が聞こえてきた。
君はその男の子が誰かをよく知っているから、「そうか」と素っ気無い返事をして振り向く。女の子は真っ赤な顔のまま、同じように振り向いた。そして、その顔がぱっと明るくなる。「おかーさん!」嬉しさに満ちた声をあげ、ぱっと走り出した。
「えみ、ごめんねェ! お母さんが手を放しちゃったから……」
「ううん、へいきだったよ! じょーたろーおじさんがいてくれたから!」
女の子のお母さんは君を見て最初は不審そうな顔つきをしていたけど、やがて君の顔が整っていることを知り、女の子のように顔を赤くする。
母親の後ろからは、リーゼント頭をした青年が息を荒くして追いついてきた。やってやりましたとでも言いたげで、その瞳は君の「よくやった」の一言を期待している。
「あらまぁ……えみを見てくれて有難う御座います。よかったら、お礼に近くのパーラーでも……?」
「……いいや、俺は別に何もしていません————じゃあ、行くぞ、仗助」
「あっ、はいっス承太郎さん! んじゃえみちゃん、今度ははぐれないようにするんスよー」
「うん、わかった! バイバイ、ありがとーじょーたろうおじさん、じょーすけおにいちゃんっ」
手をぱたぱたと振って別れを告げる女の子に、君は口元を綻ばせて、踵を返す。その後姿を追いつつ、リーゼントの青年は女の子に片手を振って応える。「待ってくださいよォー、承太郎さん!」まるで犬みたいだなあ。ぱたぱたと揺れる尻尾が見えそうだ。
君はいつもより、ほんの少しだけ優しい瞳をして、歩いていく。
その隣に僕はもういないけれど、まぁ、君が幸せならそれでいいかな、なんて。
「……全く、やれやれだぜ」
そんなありふれた台詞を吐いてみせると、聞こえていないはずなのに、君はおかしそうに頬を緩めた。
■変わらない君に愛を願うよ
(僕のことなんて忘れちゃうぐらい、幸せになってください)
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適当に仕上げちゃったよ思わず床ドン