BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

のーまる 優ノア ( No.636 )
日時: 2013/04/03 01:05
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: QGJGVn1c)

「……先生の好きな人はいっぱいいて、きっと僕はその内の一人なだけで、結局特別じゃあないんだ。圭君もそうだよ。僕は圭君は僕に、僕は圭君に全てを曝け出せるほどの特別じゃない」

 ふてくされた顔はやっぱり可愛くて、うちは頬が緩むのを抑え切れずにいた。さらさらのボブヘアは照明によって金色に光っている。風呂上りで蒸気した肌はつるつると滑らかで、本当に中身は男なんかと疑ってしまう程。お人形みたいな優太は、お人形みたいにひらひらとしたパジャマをきて、いじけたように体育座りをしていた。

「僕の天敵の荻さんには、僕とは別に天敵であるヤギや野良がいるから、本当の意味での天敵じゃないしさ」
「何や、優太は刑事の天敵でおりたいんか?」
「……今すぐにでも死んで欲しい、とは思ってるけど」

 うちの問いには答えず、ぷうと頬を膨らませる優太は、女のうちから見ても本当に可愛い。こうして狼たちの愚痴を聞いていても、可愛いから何でも許してしまえる。お揃いで買ったパジャマだけど、絶対に優太の方が可愛い(そんなことうちがゆうても、優太はうちの方が可愛いって笑うやろうけどな)。
 しっとりと濡れた髪の毛を丁寧にタオルで拭いていく。予想通りのさわりごちや、さらさらしとる。その事実にまた顔が綻んでしまった。優太は気持ち良さそうにうちに後頭部を預けながら、静かに続ける。

「当たり前だけど、野良やヤギは僕のことを危険だとは思ってるみたいだけど、特別な人って枠には入ってないよ」
「そりゃそうやな」
「でしょ? ……つまりさ、僕は誰の特別でも、本当でもないんだよ」

 膝を抱えていた優太は、瞳に鈍い光を宿してぽつりぽつりと言葉を零していく。
 ——いつもの楽しそうな優太とは真逆の、うちだけが知っとる本当の優太。誰よりも愛されたがりで、欲しがりな甘えん坊。

「ノア、僕はこのまま大人になっちゃうのかな。誰の大切にも、特別にもなれずに、笑って生きていくのかな」
「……なーにを馬鹿なこと言っとるんや、この口は」
「ふ、がっ」

 悲しそうにしている優太の口を、ぐいっと引っ張る。柔らかい唇を思い切り摘むと、びよーんと口元が開いて、なんとも間抜けな表情がうちの前に曝された。目をまん丸にして、さっきまでのセンチメンタルさの欠片もない、間抜け面や。
 「にょふぁ?」と困惑した様子で、優太がうちにこの行動の意味を問いかける。だけどうちは理由なんて答えずに、いししと意地悪く笑ってみせた。

「優太の天敵にでも先生にでも、友達にも。うちがぜーんぶなったるから、安心しとき。優太が足りんって思っとる分、うちが全部補ったる!」
「……ふぇ、ふへほ……」
「何や、不服なんか?」
「ひはうよ! ほうじゃなふへ……」

 気まずそうに、優太の青い瞳が空を彷徨う。その姿がまるでうちのことを嫌がっているように見えたので、少しだけむっとしてしまう。「だから、何やって」とさっきより強めに聞き返す。
 すると優太はうちの手を一旦ほっぺから遠ざけると(折角のさわり心地だったのに勿体無い)、赤くなってしまった片頬をなでながら、小声で言った。

「…………友達になったら」
「なったら? なったら何や?」

 逃がさない、という意味も込めて優太の手を掴む。優太の手は、風呂上りにしては少し熱すぎる気がした。頭にかかっているタオルのせいで優太の表情はうちからはあまり見えない。そのもどかしさで、余計に語調が荒くなる。
 ちらり、とまたタオルが優太の表情を隠した。丁度そのタイミングで優太が口を開く。


「…………友達になったら、ノアの彼氏にはなれないでしょ」


 その言葉の意味を理解するのに、同じく間抜けなうちは、たっぷり十秒はかかった。













■Your sight, my delight.






「不意打ちは卑怯やないか優太!」
「そっちこそ不意打ちだよノア!」






*****

この二人は友達以上恋人未満っぽいなーって思いながら書いてたらすごい甘くなってなんかもうささめは恥ずかしい埋まる