BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- 病み高→緑 ( No.654 )
- 日時: 2013/04/29 03:20
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: eNPK8IuO)
※にきびをどうこうする気持ち悪い話
※グロ苦手な人は飛ばしてください
※ささめも書いてて食欲失せた
ぎゅり、と肉が潰れる音が聞こえた気がした。
そもそも人間の歯は退化してしまっていて生肉を断つような鋭さは持ち合わせていないのだ。いくら俺がアホっつってもそのぐらいの常識は持ち合わせている。俺の歯では緑間の頬に傷一つつけることなんて出来ない————ただその事実だけが、目蓋の裏で点滅していた。
「い゛っ……!」
緑間の悲鳴が愉快で仕方が無い。頬が緩むのを必死にポーカーフェイスで隠しながら、構わずにもう一度歯で薄い皮膚を噛んだ。それだけで赤く熟れたにきびは弾けた。にきびの中身を押し出すように、容赦なく噛み痕を舌でえぐる。
中に溜まっていた膿はぷちりと弾け、血を生んだ。舌先に絡めとった膿は血の味の方が濃く、それ自体の味はよくわからない。興味本位で飲み下し、膿を失った傷跡を埋めようと溢れてきた血を吸い込んだ。俺の舌先がざらざらしていて不愉快なのか、緑間の表情が嫌悪で歪む。猫みてぇ、とか考えてんのかな。緑間は猫嫌いだから。眉間の皺が愛おしくて、もう一度ぺろりと頬を舐めた。
「……やめろ、本気で痛いのだよ」
緑間の深いグリーンの瞳は薄っすらと濡れていて、その涙は俺によるものだって考えると何だかぞっとするものがあった。紅潮した頬にはわずかに血が滲んでいて、俺の唾液によっててらてらと光っている。
俺が傷を引っ掻き回したことで、緑間の白くすべすべした頬に出来ていたにきびは血まみれになってしまった。もう一度あの血を味わいたくなって、頬に唇を寄せる。及び腰になっている緑間の肩を掴み、逃げられないようにした。
ぐちり、と舌先を傷跡にねじり込む。むき出しの肉は熱く、そこから流れ出る血も同じ温度だ。対照的に緑間の頬は冷たく、くっ付いている俺の唇は心地よさを覚える。
「っい、っづ……!」
「ひんひゃん、ひはい?」
「だからそうだと言っているだろう、が、っづ」
顔を背ける緑間の顎をとらえ舐めやすいよう固定する。それでも頬の痛みから逃れたいのか、エース様は普段の仏頂面を放棄し泣きそうな顔で俺を見つめた。
(何してるんだ、このキ××イが、なんて言いそうな面してんなぁ)
にきびなんかで出てくる血の量には限りがあって、そろそろ傷跡は黒い血で固まり始めていた。いくら舐めてもあの赤い液体は俺の喉を滑り落ちてはくれないで、唾液だけがだらだらと緑間の頬を伝い落ちていく。汚ェなぁ、と指先で拭ってやる。
緑間は荒く息をついていた。俺の舌先が離れたことにほっとしているのか、苛立ちに似た光が双眸に宿っている。
「そんな怒んなよ、血圧あがるってー」
「……下衆が」
「おいおい、そんなキレんなって真ちゃん! せっかくの美人が台無しだぜ?」
「高尾……お前、どの口がそれを言、」
がぶり。
その傷口が愛おしくて、最後の最後に噛み付いた。緑間の驚愕と困惑に染まった表情を悠々と見下ろしていると不思議な優越感が芽生える。この気高いお姫様が俺に気を許してくれてるわけでもないのに。嗚呼、何なんだろうなこの気持ちは。
緑間がぐい、と俺の舐めていた箇所を乱暴に拭う。するとその弾みで傷口が開いたのか、先ほどよりも大粒の血がぷくりと溢れてきた。「あ、っはは!」俺を睨む緑間の頬から流れ出る血は、ようやく“らしい”感じになったので、嬉しくて思わず声をあげる。
「真ちゃん、超綺麗!」
■分相応
(なぁ、お前みたいな天才がそんな程度の傷で良い訳ねぇだろ?)
****
凡人は凡人相応の小さな傷に泣けばいいし、天才は天才相応の大きすぎる傷で初めて泣けばいいだろ。俺らみたいな凡人と同じレベルの傷で泣いてんじゃねぇよ、な高尾さん。