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　君の天国になろうと思う。
　誰からも愛されなかった、愛してもらえていたはずの君の天国に。世界を愛せずに生きている君にとっての天国になろうと思う。頑張りすぎて疲れてしまった君のための。弱さを見せられずにいた君のための。笑顔ばかり振り撒いて泣けやしなかった君のための。君の、君だけの天国になろうと思う。
　天国は素敵な場所でないといけない。天国に触れた君は、今までの苦しみから解き放たれなくてはならない。初めての居場所に思わず笑みが零れてしまうぐらい、泣いちゃうぐらい幸せな場所でないと。君の天国になるために、僕はたくさん君の好きなものを抱きしめておく。天国にやってきた君が二度と嫌いなものを見ることのないように、君の大好きなものだけを集めておく必要がある。
　大好きなものばかりが集まったその場所で、君は血の滲んだ唇をわずかに緩めて笑うのだ。僕はその笑顔が見たいがために頑張ってみせる。君の幸せを願う。君の笑顔を見て、そこで初めて僕は安堵する。

　しかし、天国は天国だ。生きている君が、まだ世界に絶望しきっていない君がやすやすと立ち入られる場所ではない。誰からも愛されず、全てに怯え、やること為すこと全て最悪の結果にしかならないような……君が今のこの世界で死んでしまわないと、天国にはやって来られない。
　君が全てに見放され、誰も愛せないときが来たら——初めて僕は君を迎え入れるだろう。

「お疲れ様、頑張ったね」

　きっといつものように緩みきった表情を浮かべて、僕はそう笑いかけるだろう。
　息絶えた君の身体を抱きしめて愛撫してやりたいぐらい、僕は君を愛してる。君の死体と共に、僕は君の天国となって生きていこう。たくさんたくさん面白い話と、笑顔を用意して待っているから。




（だから、その瞬間までは、どうか生きてくれよ）











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思い切り利用されて使われたいマゾのはなし