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　ああそうだ、と俺は今さらのことみたいに気づく。
　そうだよ、海星は海の星という意味合いの名前だ。あの塩辛い涙の沼でひっそりと輝く、遠い光の欠片。ならばしょうがない、俺は狸にも人間にも成り切れない哀れな蛙。蛙は海では泳げない。君と共にあの群青の世界を駆けてはゆけないのだ。そんなことをしたら、俺は塩辛くてしおからくて体中から涙を溢れさせてしまうだろうね。ひりひりと喉が焼けてしまうかもしれない。乾いた唇では君に愛の言葉どころか泣き言すらあげられない。（……だから俺は、一生この井戸で君を見上げるよ）辛さも苦しさもないこの真水の中で、届かない君への愛の言葉を気泡に乗せて小さく吐き出すのさ。海の星までの距離はちと遠いかもしれないけれど、優しい君なら、俺のこの吐息に気付いてくれるかい？