BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- ■ゼロ距離の拳銃 ( No.742 )
- 日時: 2013/10/03 22:19
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: yMcAY8PJ)
- プロフ: ※表現すこし注意
彼の携帯から、TwitterとかFacebookのアカウント、さらには親やバイトへの連絡先っていう個人情報を全て抜き取る。ついでに、フォルダにあった彼女とのハ×撮り写真に、浮気相手である女とのいちゃいちゃメールのデータも。これだけあればこの人を社会的に殺すのなんて簡単でしょう、と私は一息ついた。
親からの少ない援助と自己愛から成り立ってるクソ大学生が選べるのは安っぽいラ×ホテルぐらい。妙にヤニ臭い部屋の壁のシミを眺めながらの彼との行為は、彼の人間性を表すかのようにつまらないものだった。一人で勝手に盛り上がって、かわいそうなひと。(たった一人の女の子のためにこんなことできる私も、かわいそうだけれど)今頃アパートの一室で眠りこけているあの子を思う。
「……ん……クリスタちゃん……?」
「あ、おはようございます、先輩。……ごめんなさい。携帯、灯りが点滅してたから、どうしたのかなって見ちゃいました」
「ああ、いいよいいよ。どうせ友達からだろーし!」
貴方は同棲して七年にもなる異性のことをただの友達扱いするんだね、とは言わない。彼はみっともなくたるんだ裸の腹を撫でながら、シーツ一枚羽織っただけの私をにやにやと見つめる。
「いやぁ、でもいいねぇ。起きたらすぐクリスタちゃん、なんて。天使の隣にいられるのは何て心地だろう!」
「やだ、そんなこと言わないでください。照れちゃいます。先輩がそうやって私のこと持ち上げるから、私どんどん他の女の子と距離できちゃうんですよ?」
「そんなこと言ってー。クリスタちゃんは本当に良い子なんだから、どうせあの口やかましい女子たちとも仲良くやってんでしょ? 仲いい子は誰だい、可愛いなら紹介してよー!」
膝を抱えてる私の肩を抱き、ぺたぺたとその指紋を肌につけてくる彼。ああ、せっかくさっきシャワーを浴びたのに、と私は辟易する。しかし笑顔は絶やさない。私は彼にとっての聖女のようだから、聖女様が怒鳴り散らすなんてしてはいけないのだ。
んぅ、と小声で小首を傾げる。彼は私の言葉を、というより私の言葉から得られるまた新たな生贄を期待してまた下卑た笑みを浮かべる。
「……そうですね。私の友達で可愛い子、なら…………一番はユミル、って知ってます?」
「えっ、と……ん? 誰、それ。サシャちゃんとか、アニちゃんじゃないのかい?」
「違いますよ。ほら、ユミルです。黒髪で、顔にかわいらしいそばかすがある子です」
「んー……わっかんねぇなぁ……俺、可愛い女の子はたいてい記憶してるんだけど」
「可愛い子ですよ? ほら、思い出せないですか————先輩が一昨日、階段で思い切り突き落とした子、です」
さっ、と彼の顔が青ざめる。事実を言い当てられたぐらいで情けない、少しぐらい取り繕ってみたらいいのに。ベッドサイドについたネオンカラーのライトが眩しくて、私はわずかに目を細めた。
「先輩が屋内で煙草吸ってるの見たから、注意したんでしょう、ユミルは。あの子ああ見えて正義感が強いいい子なんです。とっても、いい子。私よりもいい子」
「……あ、あぁ……あの、男みたいな可愛げのない……」
「そうユミルにも言ったんですよね、先輩。ブスだな、男に飢えてるからわざわざ話しかけてくんだろ、って。ユミルは先輩みたいな人間に興味ありませんよ? その時話しかけたのはね、先輩が吸ってたのが、煙草に似せて作られたいけないお薬だったからです」
今度こそ、先輩の顔色は死人みたいになる。そのまま死んじゃえばいいとは思わない。だってそのまま死んだら、ユミルが突き落とされて骨折した分の痛みは、勘定されないじゃない。ちゃんと精算までし終えてから、彼には退場してもらわないと。
ぶるぶると震え始める、汚い顔をした全裸の男。その目元の隈は女漁りの賜物だけによるものじゃなかったみたい。お薬なんて使うから、ただでさえ醜悪な顔がよりみっともなくなっちゃうんだよ。
「先輩、寒いですか? 暖房つけた方がいいかなぁ、そろそろ夜も肌寒いですしね」
べとべとがついたシーツを脱ぎながら、私は優しく問いかける。早くこんなとこ出て、家にいるユミルに思い切り抱きつきたい。ああその前に、この汚い身体を近くのホテルで洗い直さなきゃ。先輩との痕跡を消すために。用済みになったゴムを捨てるように。
私の最愛の人を傷つけたどこかのクズ野郎は、質問に答えずに、やっぱりまだ震えてる。そりゃそうよね。ドアをどんどん叩く音がするんだもの。ドアの外で待っている貴方の彼女と、そしておまわりさんのことが怖くてたまらないんだよね。
そんな恐怖、家でユミルが待ってる私にはわかんないけど。
「先輩、帰りましょうか」
——明日の講義も、早いんでしょう?
■ゼロ距離の拳銃
(女神さまに銃口を向けられるのは、一体どんな気持ちなのかなぁ)
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大学生パロでクリユミクリでモブクリです
クリスタちゃんはしたたかで可愛いと思う