BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

■あのハートはぼくのもの ( No.749 )
日時: 2013/11/07 23:34
名前: 節度使 ◆rOs2KSq2QU (ID: yMcAY8PJ)
プロフ: 回避してんだよばかやろぉ!!(ちゃぶ台返し)





 愛情が目に見える家系、なんて言うと意味がわからないと思う。端的に言えば、私たちには誰かが誰かに抱いている愛情が形となって、実体として見えてしまうのだ。物心つく前から、私の世界にはカラフルなハートたちが存在していた。
 小学生の時に思い切ってお兄ちゃんに聞いてみると「それ、他のやつには内緒な」と人差し指を立てられた。どうやらお兄ちゃんにもこのハートは見えるらしい。お兄ちゃんによると「父さんもよくわかんないハートが見えてたんだって。江は父さんの血を受け継いだんだな」
 母さんにははっきり見えるらしいけど、俺はたまにしか見えないんだよな。少しだけ羨ましそうに言って、お兄ちゃんは私の頭を撫でた。私の髪の毛をすくお兄ちゃんの右肩には、濃い青色のハートが乗っていた。まだ小さなそれはお兄ちゃんが動く度にふるりと揺れていた。

「おにいちゃん」
「何だよ?」
「おにいちゃんのね、肩にね、青いハートがのってるよ」
「…………」

 髪の毛に触れた手がびくりと怯えたのを、感じた。「うん。知ってる」お兄ちゃんは小さく頷いて笑った。ぎざぎざした歯を見せて、私を安心させるように笑う。
 青いハートの持ち主が誰かってことを、お兄ちゃんはちゃんとわかっているらしい。お兄ちゃんは転校してきた頃からモテモテだから、よくたくさんハートを持ち帰ってくる。その都度お兄ちゃんはハートを払い落としている。
 でも、今回は違うみたいだ。お兄ちゃんは青いハートをあえて払い落とさないでいる。そのハートは今までみたいにカラフルな色じゃなくて、深海みたいな青だ。初めて見る。

「きれいなハートだね」
「……そうかぁ?」
「うん、すごくきれい。このハートの子は、きっと美人なんだね」

 何気ない私の言葉に、ぼんっ、とお兄ちゃんの顔が真っ赤になった。トマトみたい。お兄ちゃんは珍しくあわあわと慌てた様子で、私の肩に掴みかかった。

「ご、江! それ誰にも言うな、母さんにもな!」
「えぇ、何で?」
「いいから!! お兄ちゃんとの秘密な!」

 いつも飄々としてるお兄ちゃんがこんなになる女の子。(……一体、だれなんだろう?)気になったけど、お兄ちゃんがあんまり慌てるので、私はその子について聞けなかった。










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幼少で一応凛遙です