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BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- ■かわいそうだね ( No.758 )
- 日時: 2013/11/18 00:56
- 名前: 節度使 ◆rOs2KSq2QU (ID: dvUrJGSo)
「シーたん」
甘ったるく呼んでやれば勇者クレアシオンは急に攻撃の手をとめ、今にも泣き崩れてしまいそうな顔になる。まだ子供なのだ。あたたかい人の温もりを、心の底では欲している。それが親なら尚更だ。それが親友なら尚更だ。
ぼろぼろの肌と大きな目を縁取る隈は、彼が何日間も眠っていないことを示していた。「くれ、あ、くれあ……」最愛の親友の名を紡ぐ声は枯れており、唇の端からは俺が放った魔法による毒が聞いたのだろう、紫に色づいた鮮血がたらたらと流れ落ちている。右腕はすでに吹っ飛ばした。治癒魔法を使おうとする気力もないのか、痛みに震える肩はひどく小さく薄く見えた。
ゆるりと手を伸ばしてやると、まるですがりつくように残った左手が伸ばされる。爪の剥げた右手は痛々しく、手首には自傷の痕がいくつも残っていた。汚い傷たちが、父親への憎悪の執念と、親友への懺悔と苦しみを物語っている。
かわいそうになあ。
思わず、魔王ルキメデスでもなく、彼の親友クレアでもない、父親としての感嘆がもれた。
***
くそくだんねえ痛みだな、という感嘆
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