BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- ■オンリーロンリーベイビー ( No.763 )
- 日時: 2013/12/03 23:18
- 名前: 節度使 ◆rOs2KSq2QU (ID: TjCRtQ22)
- プロフ: メメラギ未満ちゃん
「……そりゃ、僕は子どもかもしれないけど」と言い訳しておいて語りだすのが子どもくさい。アシンメトリーな前髪の奥から除く深いブラウンの眼は真ん丸で可愛らしい。周囲の女子よりも低いのだと嘆いているのもわかるほど、彼は小柄だ。こうして距離をとってみると、堅苦しい学生服に身を包まれていると、嫌でもわかる。華奢な手足、薄い胸板。
けして筋肉がついていないとか、か弱い印象を受けるわけではない。ただ、どこか頼りなさを覚える。普通の男子高校生より幾分か細身なだけだというのに、全てに頼られる阿良々木君は頼りない。
「それでも、くたびれたアロハシャツを着た薄汚れていて暗い顔をしているオッサンの話ぐらいは聞けるつもりなんだよ、忍野」
「阿良々木君は人をありのまま評価するのが得意だねえ。確かにぼかぁくたびれたアロハシャツを着た薄汚れていて暗い顔をしているオッサンだけど、それをあえて若さぴちぴちな女子ハーレム真っ只中の男子高校生に言及されるとちょっとは傷ついちゃうんだよね」
「傷ついてるならちょっとはそれらしい振りをしてみせろよ。にやにやにやにやしやがって。お前はいつだって僕の言葉に惑わされたことなんてないじゃないか」
「くたびれたオッサンをあまり不思議でダークな冷徹キャラにしないで欲しいね、阿良々木君。僕は自分を過大評価されるのがあまり好きじゃないんだ」
どうだか、と失笑交じりに吐き捨てる阿良々木君の右手には、畳まれたミスドの紙箱があった。忍ちゃんにドーナツを献上してきた後なんだろう。指先に砂糖がついている。どうやら一緒に自分も摘まんだらしい。
嫌だなあ。その事実にすら、もやもやとしたものを覚える。ドーナツを食べて僕の元へやってきたということは、つまり僕より先に忍ちゃんに会ったということだ。僕より忍ちゃんを優先したということだ。阿良々木君の中で、その瞬間は僕よりも忍ちゃんの方が大切だったということだ——いやぁ、阿良々木君と忍ちゃんは確かにお互いがお互いを深すぎる意味で大切にしている。別に僕はその二人の間に割って入って三角関係を演じたいわけではない。
いや、うん、そうじゃないんだけどなあ。ぼやきにも似た言葉を、自分の中でもうまく表現できない言葉を、僕は笑顔と共に飲み下す。僕は大人だから、阿良々木君のようにそうやすやすと自分の感情と吐き出すのはマナー違反じゃないかと思うのだ。
「忍野、僕じゃお前のその悩みの種を解消出来ないのか。解決は出来ない。決めることは出来ないけど、消して紛らわすことぐらいなら、僕は手伝えるんじゃないか」
「…………僕はね、阿良々木君のような子どもに頼れるほど、いい大人ではないんだ。君のその委員長ちゃんとは別のベクトルでの聖人のような気遣いには感謝するよ。だけどこれは僕の問題だ。阿良々木君に手伝ってもらうことはない」
「忍野」
再度、苗字を呼ばれる。煙草はとっくに吸い終わっていた。ちまちまと残ったほんの数センチを、まるで宝物みたいに大事に吸う。僕と阿良々木君の間にくゆる紫煙は、細く溶けて、においだけが残っていく。
ふと視線をやると、至極真面目くさった彼の顔に出会った。馬鹿みたいに色んなものを支えているはずの両肩はやっぱり小さく見えて、次に阿良々木君の口から飛び出した威勢の良い言葉が陳腐に思えた。
「僕を、頼れよ」
どこまでも真剣な眼差しをまともに捉えることも億劫で、僕はひらひらと片手を振り、曖昧に笑んだ。まさか君の言葉が嬉しかったなんて思いが滲まないように、ゆっくりと、言葉を飲み下した。
****
忍野さんは頼られても頼りたくはないし話したくもないと思うんですよね〜〜逆に他人に頼ってほしいとか話してほしいとはも言わないと思うし。阿良々木さんは抱え込みがちだけど言われたら頼るし話すし、逆に他人にも頼ってくれよ話してくれよって他人とのミルフィーユみたいに重なり合った関係の中で生きてる気がする
忍野さんは大人だから頼れないよそうだよ