BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

■星屑のエーレ ( No.764 )
日時: 2013/12/08 00:03
名前: 節度使 ◆rOs2KSq2QU (ID: 20mxVwdr)
プロフ: 星屑のエーレ/初音ミク






「大空を舞っている星たちの行方を、私は知らないなあ」

 大人になっては一人きりでしか空を見上げなくなったからか、それとも、見上げるほどの余裕が人生において無くなってしまったからか。それにしても高校生とは大人の部類に入れてよいものだろうか、私はまだまだ高校生はガキだと思うのだが、親や担任が口を揃えて大人だというので大人だけに大人しく従っておくのだった——隣にいる貴方もそうだといい、ぼんやりとと願いながら、膝を抱える。
 私が何気なく口にした言葉に考えを巡らせているのだろう、隣の貴方は冷気で真っ赤になった鼻を啜り、しばらく黙り込んでいた。

「……行方はわかんないけど、でも、どこか遥かで彩っているのはわかってるんだから、いいんじゃないの」
「でもそれって宛名のない手紙みたいなんじゃないの。拝啓どちら様、って感じ。中身はあるのに行方もその先もないなんて、私は嫌だなあ」

 まるで、私が書いた手紙みたいに。中身は恋心で溢れているのに、重すぎるほどの愛を閉じ込めているのに、封をしてしまえば後はただの手紙。宛名のない真っ白な手紙。実際、あなたへのその手紙の行方も私にはいっとうぼやけてしまっている。途切れ途切れにしか内容を覚えていないし、どこに置いていたかも覚えていない。
 閑話休題。
 貴方は私の反論に、んん、と困ったように首をひねった。答えを導こうと努力しているようだけれど良い成果は得られていないらしく、んん、とまた唸り、眉間に皺を寄せる。

「……別のこと、話そうか」

 わずかに笑ってそう告げると、君はたった一つの合い言葉を貰ったみたいに、ふんわりと嬉しそうに微笑んだ。うん、と先ほどよりも明るい表情を、私のたばかった心の奥にしまい込んでみる。胸がほっと安堵感に包まれるのは、貴方の笑顔だからだろう。
 同時にまぶたの裏にしまい込んだその笑顔は、きっと明日さえも弱くも照らすんだろう。それがいい、と願った。





「今だけでもいいから……僕らの小さな小さな世界を抜け出して、沈んだこんな夜空に星たちと笑っていよう」

 そういえば貴方は自分のことを僕と呼ぶ。男ではない、むしろ誰よりも女の子らしい女の子なのに。おかしいとは思わないけれど、なぜそう呼ぶのかという理由は気になるものがある。
 冬の夜空のした、初めて私はその理由を聞いてみた。すると貴方は、短い前髪を指でもてあそびながら、んん、とやはり困ったように呟いた。

「満たされない、からかな。うん、きっとそうだ。満たされないんだよ」
「チョコレートが苦しい、みたいな全く前後の文脈が関係ない答えだと思うのは私だけ?」
「そんなこと言うんだから。僕が言わなくても、大体の理由は君だってわかってるくせに。どうせあなたも、きっと満たされないのでしょう?」

 指を、突き付けられる。カイロじゃとても暖まらなかったほど冷え切った、貴方の細く白い人差し指。貴方の言葉に目が醒めた私の方を、真っ直ぐに指す。
 ああ。その言葉にようやく、今更のように、時計の針も回ったんだ。











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創作百合予定