BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

■君だけが僕の、 ( No.787 )
日時: 2014/02/04 08:46
名前: 節度使 ◆rOs2KSq2QU (ID: PduCEO2V)
プロフ: みどたかぐらい









 頼むからもうやめてくれと懇願された拍子に、奴は手にしていた俺の左腕を床にたたきつけた。スポーツも何もやってないひ弱な人間がたたきつけてもどうにもなるまいが、スポーツ、しかも球技をしている体力が有り余った男子高校生があんなたたきつけ方をすれば、同じように鍛えた俺の左腕とて無事では済まないだろう。きっと爪のひとつは割れているだろうし、打ち身をしているかもしれない。戻したときの苦痛を想像し眉根を潜めていれば、なんだよ、と涙声の奴が言う。「なんだよその目、嘲笑ってんのかよ」言いがかりも程々にしろと思うが、精神を病んだ人間に言えることなんて俺にはひとつもない。黙っていると、奴は唸りながら、押し倒されたままの俺に覆いかぶさった。

「うう、うううぅ、ぐ、ううう…………」

 獣のようだ。それも、従順で可愛い犬なんてものではなく。ましてや人間にいいように弄ばれている猫でもなく。ガラス槽の向こうの熱帯魚でも、車輪の中でからころと動くハムスターなどでもなく。
 肉を追い求める、鷹のような鋭い爪と目を持つ獣。

「なんで、何でお前なんだ、くっそ……くそ……」

 自ら押し倒した男の上で、奴は、高尾はそう自分を責める。泣こうとしないのは、それだけが高尾にとっての俺への最後の抵抗なんだろう。冷たい床の上、熱い奴の手のひらがぐいと俺の心臓のあたりを押した。圧迫感と熱さが胸を伝わり、俺の意識も冴えわたらせる。
 ふと視線を逃がすと、転がったままの俺の左腕を見つけた。丁寧にテーピングされている指先には血が滲んでいる。俺の身体から離れている俺の左腕。奇妙な感覚に襲われながら、高尾の次の言葉を待つ。

「俺は、お前の才能だけだと思ったのに」

 支離滅裂な、最低限しか意味を持たない言葉たち。だが当事者である俺はそれがどういうことを意味しているのかも知っていたし、なぜ高尾がそんな風に今さら俺に言うのかもよくわかっていた。だからこそ黙っているし、黙らされている。
 こんな時でさえ脳裏には今日やらなくてはならない課題や、明日の朝練について考えてしまうのだから、過去の同級生たちに言われた無神経という言葉が胸でささくれ立つ。どうしようもないだろう、これはこいつの問題だ。こいつのコンプレックスなど、俺が知るところではない。言い返してやりたい気持ちもあったが、高尾がひどく狼狽した顔をしているので言うチャンスを逃した。








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クソ短いですが補足
高尾くんは緑好きだけど、それは「俺が好きなのはたぶんこいつの才能とかだろうなwwwwふえwwww」とか思ってましたけど、でも実際に才能の固まりである緑間君の左腕を奪い取ってどこかに置いてみて、そして改めて緑間君みても相変わらず高尾の心はドキドキするし好きだしで「ああなんだよくっそ何だ俺才能じゃなくてこいつ自体がすきなんじゃん」って自覚しますけども。でもいろいろ考えちゃって今まで大嫌いな人間のことが今さら好きとかなんなんだ俺くっそ!!!みたいな思春期特有のアレ(丸投げ感)
眠いのでまた押し倒す流れとなりました。愛嬌と笑顔ふりまくので許してください