BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 戦国BASARAでBL「忍、恋愛涙」 ( No.51 )
日時: 2010/08/16 11:50
名前: 月女神 (ID: McW0.Kc7)

思い交差編 【幸音視点】

彼方が出かけてから、かなりの時間が経って夜の帳が落ちる。
彼方は帰ってこない。帰る気配すらもしない。
もうすぐ夕餉だ。

「彼方、どこに行ったでござる」
「幸音殿。どうしたでござるか?」
「幸村殿…」

幸村殿が心配そうな表情で訊いてきた。
某は全然平気だ。

「幸音、で良いでござるよ」
「某は幸村と呼ぶでござる」
「うむ。彼方が帰ってこないのだ」

幸村は驚いた表情をした。
何かあったのだろうか。分からぬ。

「彼方殿が…? どこかに行ったでござるか?」
「かもしれぬ。彼方はこんな時間まで遊ぶ奴ではござらん、いっと何かあったのだろう」

心配になる。これは主としての当然の思いだ。
彼方は昔から、主である某に心配をたくさんかける奴だった。でも、一度も某から離れた事はない。
彼方は某の事を大切に思っているのだから。
だから、某も大切に思うのだ。彼方の事を。

「あっれ? ゆっきー!!!!」
「なっ……紅羽殿?!」

紅羽殿がいきなり某に抱きついてきた。
い、いつもなら彼方が守ってくれるのに……。何と言う不覚!

「あれ? 彼方君は?」
「彼方は留守でござる」
「へぇ、そうなんだぁ…」

少し残念そうな顔をして、紅羽殿は某から離れてくれた。
後から割烹着を着た、オカン佐助殿が現れる。

「何してるの、3人とも。あれ? 彼方は?」
「出かけたきり、帰ってこないそうよ」

紅羽殿がサラリと言った。
まぁ、間違いはない。実際、彼方は帰ってきてないのだから。
おかしいわね、と紅羽殿が携帯を出してかけた先は。

「もしもし、伊達君?」
『Ah〜? 何だ、竹中か。どうした?』
「そっちに彼方君いないかしら?」
『彼方? いや、いない。いたらいたで政宗が盛るからな』

凜音殿だった。
そうか、あちこちに電話をすれば良いでござるな!
紅羽殿は色々話して、こちらに顔を向けた。
深刻そうな表情だ。何かあったのだろうか。

「彼方君、奥州にはいないって」
「何? 政宗殿の所にはいないでござるか?」

幸村が紅羽殿に訊いた。
紅羽殿はうなずく。とても深刻そうに。

「他の所にもかけるけど…。思い当たる理由を探してね」
「うむ」

思い当たる、事? そう言えば、彼方は。


「幸村と、佐助殿が仲良くしているのを、悲しそうな表情で見ていた…」


「「え?」」

それはもう驚きであろう。嫉妬か、それとも単なる家出か。
あぁ、分からん! 彼方、早く帰ってこい。
すると、紅羽殿が何かに気づいたようだ。

「もしかして、彼方君。あなた達2人の内、どちらかが好きだったんじゃないの?」
「「嘘だっ!!」」

2人は息がぴったりでござる。
その時だった。


ピルルルルルルルルルルル………。


「某だ。もしもし?」
『………旦那?』

彼方の声だ。

「彼方! 今どこにいる!」
「か、彼方殿でござるか?」「彼方?」「彼方君?」

皆、心配している。
だが、彼方は衝撃の一言を告げた。


『俺様、もう甲斐には帰れない』


どういう事だ? 甲斐に帰れない?
じゃぁ、もう某達とは共にいれないのか?
彼方はけらけらと軽く笑いながら言った。

『皆が俺様の事を忘れるまで、俺様は消えるよ。その方が幸せだろ。佐助も、幸村の旦那も。あぁ、旦那は寂しいかもしれないけど』
「帰ってこい! これは命令だ!」


『旦那。あんたは、俺様の事をしっかり覚えておいてくれよ。じゃぁな』

そこで、電話は途切れる。
あぁ、そうか。彼方は……。


「幸村か、佐助殿のどちからが好きなんでござるな」


*****

ゴメン、旦那。でも、あんたは覚えておいてくれよ。
俺様だって辛いんだ。甲斐に帰りたいし、皆と笑いたいし。
でも、出来ない。帰れないし、何より邪魔になるだろう。
心配をかけるみたいだけど、仕方ないんだ。


ゴメン

愛していたよ。


「佐助っ……」