BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 戦国BASARAでBL「忍、恋愛涙弐ー猿影彼方は俺の嫁!ー」 ( No.103 )
- 日時: 2010/11/14 18:07
- 名前: 月女神 (ID: GlvB0uzl)
銀猫編 第5話【視点無し】
※残虐表現ありです。注意!
戦場を駆ける銀影。宙を舞う、血飛沫。
白刃を巧みに操り、人をなぎ倒して行くのは紅羽だった。
紫色の瞳には、最早目の前に敵しか映っていない。ただ斬って斬って。血を浴びる。
あとどれほど斬れば、彼女は止まるのだろうか?
後ろから襲ってくる敵を、蹴り一つで地面に沈ませ、前から襲ってきた敵を刀一本で叩き斬る。
戦っているだけ。彼女は、甲斐を守る為に戦っているだけだった。
「……ッ……」
遠くから見ていた彼方は、唇を噛んでただじっとしているだけだった。
本来ならば、紅羽を無理にでも城に連れて帰り、代わりに彼方が行くはずだ。なのに、彼は出来なかった。
今此処で、紅羽を連れていこうとするならば、彼女は何と叫ぶだろうか。どんな表情で、自分を見るだろうか?
「紅羽ちゃん……」
彼方は、ただ悔しそうな瞳で、紅羽を見ているしか出来なかった。
*****
「彼方! 紅羽殿は、紅羽殿はどうした!」
城に帰ってくるなり、幸音は彼方に飛びついた。
答えない、何時まで経っても何も言わなかった。まだ戦っているなんて。
彼方は、紅羽を止められなかったのだ。
「ゴメン旦那。俺、紅羽ちゃんを止められなかったよ」
事実。
ただ、止められなかっただけだ。なのに何故、こんなにも悲しくなるのだろうか。
あの戦う姿を見て? 血に濡れた姿を見て? 必死になっている姿を見て?
全て否。
理由が分からない。
幸音は、途端に床に崩れ落ちた。
「旦那!!!」
「大丈夫だ」
幸音は首を振り、壁に手をついて立ち上がる。だが、足取りはおぼつかない様子だった。
彼方は幸音に向かって手を伸ばしたが、幸音は手を振り払い両手にモップを持った。
何を、と彼方の口がそう告げる。
「紅羽殿を、助けに行く」
そう一言、彼方に告げると幸音は廊下を駆けだした。
彼方は止めようと幸音を呼ぼうとしたが、出来なかった。言葉を飲み込み、幸音の背中を見ているだけ。
—— 旦那まで、失うつもりか?
違う。
—— このまま何もしないままで、終わるのか?
違う!!!!!
—— だったら、己を懸けてまで守れ。それが、忍びの運命。
「彼方?」
いつの間にか佐助が、彼方を覗き込んでいた。
彼方は一瞬飛びのき腰の大手裏剣を構えたが、佐助を認識すると安堵の息を吐く。
佐助は、彼方の頭を撫で軽く頬にキスを落とした。
「彼方。俺様はね、彼方がどんなになってもちゃんと愛しているから。頑張ってきな」
佐助の優しい声が、彼方の耳元で聞こえた。
心が軽くなる。鎖に解き放たれたような、そんな感覚が彼方を包んだ。
フッと小さな微笑を浮かべ、彼方は佐助を抱きしめる。
「ありがと。頑張る」
そう言うと彼方は、鴉の羽を残してその場から消えた。
すると、横に海琉が現れる。そして、佐助に問いかけた。
「銀、知らない?」
「銀って、あの猫?」
海琉は軽くうなずいた。
佐助は首を傾げる。海琉は、確か猫あれるぎーという物で、猫が大嫌いのはずだが。
確かに聞こえたのは、銀という猫の名前。
「知らないけど」
「……まさか、あいつ」
海琉は、強張ったような表情を浮かべ、廊下を走りだそうとした。
が、佐助に腕を掴まれ制される。
「放せ! 大変なんだよ!」
「何がだよ、あんた怪我してんだろ!」
海琉の慌てようは、異常だった。
「銀が、1人で戦場に行った!」