BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 戦国BASARAでBL「忍、恋愛涙弐ー猿影彼方は俺の嫁!ー」 ( No.114 )
日時: 2010/11/28 12:15
名前: 月女神 (ID: GlvB0uzl)

戦国死神編 第1話【最初は視点無し】

とても月が綺麗な夜だった。
雲1つ無い、夜の帳の中。月光に照らされて輝く白髪。腰には上等の刀が1本。小太郎だった。
小太郎が向かうは、あの人の許へ。姿が見え、安心したような表情を見せると、声をかける。

「小十郎さん」
「……小太郎か」

小十郎は、小太郎に視線を投げた後、畑へと視線を移す。
闇で良くは見えないが、そこに畑が在るのは確かだ。

「畑ですか?」
「あぁ。少し、心配でな」

小十郎は、柔らかな笑みを浮かべた。
その笑顔を見て、小太郎は安心したのか、ツイと背を向けた瞬間。

1つの風が吹いた。


「……小太郎?」


そこにあったのは、彼がいつも愛用していた刀だけ。


*****【彼方視点】

それは、1つの電話から始まった不幸だ。

今日は特に何もないから、皆に出すおやつを考えていた時、携帯が鳴った。
まさか、帰れるのかと思ったら。うん、当然違う。
凜音からだ。

「もしもし。どうしたの、凜音」
『小太郎、そっちに行ってないか?』
「来てないよ」

凜音の声が、わずかに震えている。焦っているのが、よく分かった。
俺が、おそるおそる凜音に訊く。

「何があったの?」
『小太郎が、いなくなった』


それから、10分ぐらいが経った。
凜音と政宗、そして小十郎さんが甲斐の城に来た。翔が天空に何かを許可していたのが気になるが。
紅羽ちゃんが元千代と元喜に電話して、潤さんと五月ちゃんに連れてきてもらっていた。先祖も。ついでに、慶次も。

「小太郎がいなくなったって……。どうしてだよ? あいつは彼方と違い、どこかにフラフラするような奴じゃないぞ!」
「どういう意味だ、元千代。喧嘩売ってんのか?」

そう言うと、旦那が間違っていないだろうと言った。
確かにね、消えますよ。責任を感じた時とかね?
凜音が泣きそうな顔で、言葉を紡ぎ出す。

「小太郎は、俺に黙ってどこかに消える奴じゃねぇンだ! 誰かに攫われたんだ!」

有り得る話。でも、そういう確信はない。
すると、今度は小十郎さんが。

「すまねぇ……。俺があの時、小太郎から目を放していなければ……」

細々とした声で、凜音に謝る。手には、小太郎がいつも持っていた刀が握られていた。
大切にされていたんだな、小太郎。それはそれで良いんだが。今はそんなほのぼのしてられない。
すると、そこに現れたのはお館様。

「彼方、きせら、海琉の猿影3兄弟よ。いるか?」
「ハイお館様。ここに」
「私もいます」
「…………」

お館様は、曇った表情で俺らに言う。

「豊臣が小田原に向かうそうだ。行って、偵察してきてくれ」
「「了解しました」」
「あー……。俺、パス」

兄貴がへらりちした表情で、お館様に手を振る。
ハァ?!!! 今、こいつ。何つった?

「何かダルイ。やる気しない。もう疲れた。2人だけで頼んだわ、Are you OK??」
「ちょ、待てよ兄貴!」

大広間を出る兄貴を追いかける。
陽だまりの廊下に出た兄貴の背中は、やけに寂しそうだった。冷たいオーラを身に纏い、悲しそうだった。

「兄貴、どういう————」
「うるせぇな!!!!」

兄貴がどなる。
どなるなんて事は、まず無かった。兄貴は、俺やきせらの事を思っているから。
俺もなんやかんやで言いつつも、兄貴を大切な家族だって思っている。変態部分もあるが、憧れだ。いつかは、兄貴みたいになりたいと思っていた。
ところが、今の兄貴は何か変だ。様子がおかしい。
心の中で何度も何度も、俺に向かって謝っているかのような。

「兄ちゃんが行くとこに、口出しすんなよ。良い子だから、大人しくしてろよ」

兄貴は、悲しそうな表情を俺に向けると、風を残して消えた。
後からきせらがやってくる。

「大丈夫だよ。なんだかんだ言って、1人で行くつもりだったんだよ」
「そうかもしんないけど……」
「きっと、またけらけら笑いながら帰ってくるって」

きせらの言葉が、やけに心に重くのしかかった。


*****【海琉視点】

俺、もう甲斐に戻れかもしれない。
お館様に顔向け出来ないし。何より、凜音君や政宗君に迷惑をかけている。
いや、迷惑どころじゃない。殺されるかも。
……当然の報いか。殺されるよな、やっぱ。

「猿影海琉、只今参上仕まつりました」
「やぁ、海琉君じゃないか」

ゴメンよ、彼方にきせら。
兄ちゃんは、お前らの為に敵になる。お前らの為に、戦う。
だから、しばらく戻れないかも。いや、戻らないだな。

だって、小太郎君を拉致したの。


俺だし。