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Re: 戦国BASARAでBL「忍、恋愛涙弐ー猿影彼方は俺の嫁!ー」 ( No.120 )
日時: 2010/12/08 22:47
名前: 月女神 (ID: GlvB0uzl)

戦国死神編 第5話

大阪城。
長い廊下にスタッと着地した俺は、兄貴の姿を探す。
いないのは分かっている。これから探すのだから。
歩みを進め、廊下を進んだ時だ。

「海琉君、次の任務だ」

……この声は、竹中半兵衛!!!
1部屋の中から聞こえたのは、竹中半兵衛の声。
襖に耳を当てて、中の会話を盗み聞き。

「……半兵衛様。この任務は——」
「海琉君、分かっているのかい? 君は呪縛から逃れられないんだ。命令を聞くしかないんだよ」
「————ッ!!!!」

僅かに聞こえたのは、兄貴と半兵衛の声だった。
次の任務? 一体何の事だ。
すると、部屋から兄貴が出てきた。俺の姿を見るなり、表情が強張って行く。
すぐさま忍者刀を取り出した兄貴は、俺に攻撃を仕掛けてくる。
大手裏剣で攻撃を防ぎ、兄貴と距離をとった。

「何で、彼方がココに!」
「どうして兄貴は、豊臣なんかに居るんだよ!」

俺は叫んだ。
兄貴は泣きそうな声で、俺に向かって言う。

「関係ないだろ。兄ちゃんがする事に、いちいち口出しするなよ」
「そうだけど……。それでも、俺は兄貴を豊臣には——」

一陣の風が吹く。
兄貴が、言霊を使って俺を攻撃したのだ。
俺は大阪城から身を投げ出され、暗黒の空へ飛ばされた。その時に見た、兄貴の表情は。

とても悲しそうだった。


——ズキン、


胸の奥で、何かがうずく。
『殺せ』と、誰かが叫んだように聞こえた。
嫌だ。ダメだ。落ちつけ、俺。
あの時みたいには、なりたくない————!!!!

「彼方!!!!」

ガクッ、と体が宙で止まる。
闇夜に映える、橙色の髪の毛。そして鳶色をした瞳。見覚えのある忍び装束。

佐助。

「佐助ぇ……(泣」
「大丈夫か。皆いる」

佐助は地に戻る。
目の前には、皆の姿があった。旦那も凜音も政宗も小十郎さんも。お館様も上杉殿もチカさんもナリさんも皆みんな。
風魔もいたことに驚いた。

「どうして————??」
「決まってるだろ」

佐助は、にっこりと笑い俺を抱きしめてくれた。

「彼方を助けに」

あったかい体温が、俺の体を伝わってくる。熱い何かが頬を伝い、流れてくる。
これが人? 生きている証拠?

「ありがとう……。本当に、ありがとう」

俺は、泣いていた。
それだけは、しっかりと覚えている。


*****【海琉視点】

何で俺はこんな事に巻き込まれているのだろうか。
前に、豊臣から来た手紙を見てからだな。俺って超不幸。
あの手紙は、本当は彼方宛てだったのだ。なんかむかついたから開けたら、爆弾と手紙が一通。

—— 甲斐を裏切り、豊臣に下れ。

—— さもなくば、お前の大切なものを消しに行く。

完全に脅しの手紙だった。
彼方に、こんな事はさせたくない。兄として、家族としてそう思い。
俺が代わりに裏切った。ただそれだけ。
これがこんなにも辛いとは思わなかった。思いたくもなかった。体がねじれて、もう死ぬかと思ったけど。
今の俺には、首輪がついている。引きちぎる事も出来ずに、ただの従順な犬さ。

俺の最終任務は、彼方達を殺す事。

侵入者を排除せよと、半兵衛様から命令だ。これが終われば、俺は晴れて自由の身。
だけど。だけどよ……。独りになるなら、死んだ方がましかもしれない。
このまま逃げてくれ、お願いだ。
俺は、お前らを殺したくないんだ。

「兄貴!!!!」

バンと音がして、大広間の襖が開かれる。
入ってきたのは燃えるような紅蓮の色をした髪の毛、そして見覚えのある顔。
我が弟の姿だった。

「兄貴、戻るぞ」
「残念だね。俺は戻らない。今ここで、全員排除する」

やるしかないのか?

俺は、一体————???


*****【小太郎視点】

何で俺はここにいるんだろうか。
えーと、思い出せ。思い出せよ俺ぇ……。
まずはぁ、目が覚めたらここに閉じ込められていたと。
何で記憶が吹っ飛んでんだ、俺!!! しっかりしろ。しっかりするんだ!
ダメだ、もう何も思い出せない。

「やぁ、小太郎君」
「…………。えーと、半兵衛さん」

銀髪が月光に照らされて反射する。まぶしいな、うん。
半兵衛さんは、俺に一言。


「彼方君達が、今ここにいるよ」


地獄だな、ここは。