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Re: 戦国BASARAでBL「忍、恋愛涙弐ー猿影彼方は俺の嫁!ー」 ( No.121 )
日時: 2010/12/09 18:28
名前: 月女神 (ID: GlvB0uzl)

戦国死神編 第6話

兄貴は、とても苦しそうな表情で忍者刀を構えていた。今にも泣きそうで、辛そうで。
俺が来たから、そんな顔をするの? 俺がここにいるから、そんなに辛そうにしてるの?
もう。もう苦しまなくて、良いんだよ。

「兄貴、戻ろう? 皆で迎えに来たんだ」
「黙れ」

兄貴は、苦しそうにうめく。

「戻ってきてよ!! 兄貴!」
「黙れって言ってるのが聞こえないのか!」

部屋に響く怒号。
兄貴の双眸からは、二筋の涙が伝っていた。多分、苦しいからだ。
俺らがここにいるから、兄貴は泣くんだ。そうだろう?
だって、兄貴は俺らを殺そうとしているんだから。俺らを全て、排除しようとしているんだから。
俺も悲しいよ。兄貴を、相手しなきゃいけないんだから。
だから最後にもう1度。

「兄貴、お願い……」
「黙れぇぇぇぇ!!!!」

兄貴は床を蹴り、俺に向かって刀を斬りつけてくる。
反射的に大手裏剣で弾き返し、攻撃を防いだ。ハッキリ言ったら腕が痛い。
流石19歳。俺とは大違い。
すると、兄貴は印を結び言霊を唱える。

「風/斬り裂け/蠢け/引き裂け!!!」

まだ続く。風が、兄貴の方に集まって行く。

「陽炎/翳る/雲隠れ/月光/風よ/刃よ/相手に!!!」

風が集まり、形を成す。
あれは———— 野太刀?

「風刃・月光斬(フウジン・ゲッコウザン)」

野太刀は刃となり、俺らに向かってくる。
だが、それは残念。兄貴、あんたは

負ける。


「双舞『とおりゃんせ』」


刃に穴が開き、そこから四散する。
元千代が双剣を構え、笑っていた。さっきの技は、元千代の剣術である。
兄貴が驚いたような表情をしていると、兄貴の背後にはかすがさんが現れた。

「密儀、陽炎!」

糸が巻き付いた苦無が飛び、兄貴を縛りつける。
身動き出来ない兄貴に、とどめの一発が先祖から送られる。

「疾」

風魔の対刀が、兄貴の体へと襲いかかる。

「がぁッ!!!!」

苦しそうにうめき、部屋の奥へと吹っ飛ぶ。パラパラと埃が舞った。
これで終わったと思った瞬間、風が起きる。

「風/竜巻/我が命/従え/空/引き裂く/剣/裂け」

風の中にあった兄貴は、弓を持っていた。
ここで終わる? いいや、最後は俺がやる。
兄貴を助ける為に。俺は————。

「彼方!!」

佐助が叫ぶのが聞こえた。
俺は前に進み出ていたらしい。でも、これで良いんだ。
これで、兄貴を救えるんだ。

「呪術、禁忌」

ズズズ……と、俺の体から影が噴出される。
これは、大きな危険を冒す禁断の技。命を落とすかもしれないけど、それでも良いんだ。

「風刃・刺突矢(フウジン・シトツヤ)!!!!!」
「闇空疾風」

黒と白の風が、相殺された。


*****

埃が舞い、景色が何も見えない。
やがて晴れた時には、兄貴の姿が床に転がっていた。
兄貴?
死んじゃったの?
俺が、殺したの?

「兄貴……」

ピクリとも動かない。

「……か、いる……」

禁止されている、名前で呼んでみようと思った。
そうすれば、いつもみたいに——。

「うみぃぃぃぃぃ————!!!!!」
「その名で呼ぶなあぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」

ガバッと跳ね起き、兄貴はどなる。
そう。兄貴は「海」と呼ばれるのが大嫌いなのだ。海琉(かいる)って、海という漢字が入っているから。
ちなみに、俺は「空」と呼ばれるのが嫌い。
きせらは「炎」と呼ばれるのが嫌いである。

「嫌がらせかおい。おい? 空って呼んでやろうか日常でもそう呼んでやろうかあぁ?!!」
「黙れ海! 海うみうみぃぃぃ!!!」
「そうだ海ぃ!」
「だぁぁぁぁ!!! 兄弟そろってぇぇぇぇ!」

兄貴はどなる。
俺ときせらは、笑っていた。
戻った。これで、終わるかな……。

終わらない。


「使えぬな」