BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 戦国BASARAでBL「忍、恋愛涙弐ー猿影彼方は俺の嫁!ー」 ( No.127 )
- 日時: 2011/02/17 22:02
- 名前: 月女神 (ID: GlvB0uzl)
死神暴乱編 第4話
———— ここは、どこだ。
俺は、真っ暗な所で目を覚ました。
何だろう。とても、怖いところだ。独りだし、暗いし。自分が自分ではなくなる。
—— 佐助。旦那。皆。どこ?
そして俺は気付く。声が、出ていない事に。
どこにいるんだろう。何で俺はここにいるんだろう。
「やぁ。現実の『彼方』」
目の前に現れたのは、俺とよく似た—— 訂正。そっくりな奴。
俺? そんな馬鹿な。
「何だ? じゃぁ、彼方とでも呼べばいいか?」
—— 俺の名前を知っている?
目の前の『俺』は、けらけらと大笑いする。
でも、俺とはどこか違う。冷たいような、そんな感覚だ。
「声が出せないのか。まぁ、いいや」
『俺』は、残念そうな表情を浮かべて、話し出す。
それは、どこかで聞いた事がある話。記憶の底の底にあるような、深い小さな破片。
「今のお前には『俺』が必要だ。今の猿影3兄弟の、本性を現す時が来たんだ」
今の、俺ら?
海琉ときせらにも、同じような奴がいるのか?
「忍びとしてのお前らを、お前の1番近くにいる奴が封印しちまった。だから、こんな深いとこに閉じ込められてるんだよ」
どうして。一体誰が?
そう問おうにも、目の前の『俺』は「何も言うな」と言ってきて、言葉を遮る。
「お前らの大切な人を守る為なら、俺は喜んでお前に協力しよう。俺は死ぬ事はない。お前も死ぬ事はないんだ」
『俺』は、にっこりとした笑顔を浮かべた。
「俺の名前を教えておこう。俺の名前は——」
*****
目に入ってきたのは、赤紫色の夜明けの空。
辺りは瓦礫の山で、体の節々が痛い。首だけを動かせば、仲間の全員が気絶していた。
お館様と上杉殿は、兄貴が守ってくれたらしい。どうせなら、政宗も守ってやれよ。
「さ、すけ……」
俺の先祖の名前を呼ぶ。
お願い、今少しだけ会いたいんだ。誰よりも、何よりも愛しているあんたに。
俺の近くに、橙色の忍びが落ちていた。
手を伸ばせば届く距離。俺は、動かない体を引きずって、佐助の許まで近づく。
佐助は、そんな俺に気付いたのか。目を開けて、俺を見上げてきた。
少しボロボロの腕を伸ばし、俺の傷ついた頬を優しく撫でる。
「彼方、無事でよかった……」
「佐助。佐助ぇ……。死んじゃ嫌だよおぉ……」
ボロボロと涙を流す俺に対して、佐助は柔らかく笑う。
大丈夫だよ、と言っているようで。温かく、優しく俺を抱きしめてくれる。
「佐助、1つだけ聞いてくれる?」
「んー? 何?」
「どんな俺でも、ちゃんと好きでいてくれる?」
その質問に驚いたのか、佐助は目を丸くして笑う。
でも、真剣だと気付いたのか、佐助はもう1度だけ、抱きしめてくれた。今度は強く。
「大好きだよ。どんな彼方でも、たとえそれが、残忍な性格になろうとも」
その言葉を聞いて、少しだけ安心出来た。
「ありがとう。佐助」
俺はにっこりと笑い、佐助をもう1度抱きしめる。
そして佐助から離れて、リエンの姿を確認する。
リエンは今、ボロボロの翔と戦っていた。あちこち傷だらけで、息も荒く疲れているように見える。
大丈夫だよ、皆。俺が全部助けてあげる。
リエンも。翔も。何もかも、全部。
「我、闇空疾風の名に懸けて—— 封印を解き放とう」
言葉が夜明けの空へと昇っていく。
「我が中に眠る、もう1つの人格よ。我の体に召喚する事を命ず」
がら、と誰かが起きる音がした。
きせらと兄貴が、ゆっくりと起きていた。
皆も意識を取り戻したらしく、ゆらりと立ちあがり俺を見ていた。
俺、皆を守るよ。
「誰も殺す事は許さぬ。我が本性を、ここに表そうぞ。猿影の、本当の姿を」
「『せつなのやみによこたえる、わがしのびとしてのほんしょうを——』」
影が俺を包んでいく。
瞬間—— 翔とリエンの間に、黒光りする苦無が現れた。
「何?!!」
「……、おま、えは」
夜明けの空を背負い、現れたのは
肩までつく黒髪を宙になびかせて、頬に一筋の傷をつけた闇色の少年だった。
「猿影、彼方——?」
「彼方? いいや、違う。俺の名前は」
夜明けの空に響く、凜とした声。
「猿影狂(サルカゲ/クルル)だ」
・
狂は、にっこりと笑った。