BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 戦国BASARAでBL「忍、恋愛涙弐ー猿影彼方は俺の嫁!ー」 ( No.131 )
日時: 2010/12/16 17:05
名前: 月女神 (ID: GlvB0uzl)

死神暴乱編 第7話

目を開ければ、そこにあったのはどこまでも高く、そして澄んだ蒼穹だけ。
あぁ、高いのに手を伸ばしても届かないなぁ……。
体がまだ動く事を知り、俺は上半身を起こす。
瓦礫の山とそこかしこに散らばる、潤さん達。真ん中でボーッと立っているのは、リエンだった。
息が荒く、今にも死にそうな予感。
すると、背後の方でパチンと何かが弾ける音がした。
直後、背中に抱きつかれた温かい感覚が駆ける。それが、佐助の温もりだと知るのに、10秒要した。

「……生きてて、良かった」

佐助の涙声が、俺の耳朶を打つ。
生きてて良かったよ。俺も。

終わるのは、まだ早かった。

「あはは……。翔も、死んじゃったかなぁ……?」

リエンの震える声が、朝の世界に浸透する。崩れた笑みを浮かべながら、独り言のように喋っていた。
翔は、少し向こうの瓦礫に寄りかかって眠っていた。起きる気配もまるでない。
リエンは、それを捕らえると、いきなり涙を流し始めた。

「リエンは。本当は弱い死神なんだ。いつも恐れられているのは、翔の姿をコピーしているだけ」

泣きながら笑う。一体どういう感情をしているんだ。
悲しいのか嬉しいのか。本当にハッキリさせてほしいな。

「本当に強いのは翔だ。リエンじゃない。死神らしくもない。心も力も強いのは、全部翔だ」

ふらり、またふらりと歩みを進める。
翔の許にたどり着いたところで、リエンは瓦礫の上に座り込んでしまった。
ぽたぽたと大粒の涙を流しながら、言葉を紡ぎ出す。

「ゴメンね翔。リエンは、本当に弱い死神だよ」

ピシリ、とどこかで音がした。
リエンが苦しそうにうめきだし、頭を押さえ暴れ出す。
何事かと思って、佐助に手を借りて立ちあがり走り出した。

「ありがと。こんなリエンと、一緒にいて、くれて——」

リエンは最後に笑うと、蒼穹へ飛び立った。
爆発する気?!!! そんなの、全力で止めさせなきゃ。
その時。

「彼方——」

「翔?」

俺の手をつかむ、冷たい感触。それは、翔の腕だった。
翔は、必死の形相で俺に頼み事をしてきた。

「リエンの許に、連れて行って——」


*****【リエン視点】

「リエン!!!」

誰だろう。リエンを呼んだのは。
まぁ、いいや。もうリエンは死ぬのだから。
リエンは出来そこないの死神。実体も持たない、幽霊のような存在だったから、翔の姿を借りていた。
いつしか最強の名を、欲しいままにしていた。それで、他の死神達は、リエンを怖がるように避けた。
独りは悲しい。確かにそう。
でも、リエンのたった1人の友達がいた。姿を貸してくれた、翔だけ。
後からだんだん、7死神も友達になってくれたけど。さっきのように、暴走したら殺してくるんだろう。
だったら死んだ方が良い。それで良い。

「リエン!!!」

もう1度、リエンを呼ぶ声。
翔の声。何で、上から降ってくるのだろうか?

直後。温かい何かが、リエンに振り注いだ。

「リエン。悪かった。お前を、こんなにボロボロにした」

耳元で翔の声が聞こえた。

「お前もここをボロボロにしたんだ。上に怒られるのも当然だ」
「翔……?」

翔が、笑ったような気がした。

「だから。一緒に怒られよう。それなら、俺も安心出来る」
「独りに、しないでくれるの?」
「約束する。独りに、しないから」

温かい。温かい。
これで良い。リエンは、もう独りじゃない。


*****

「旦那。使用許可をお願いします」
「うむ」

空で抱き合う2人の死神を見て、俺は旦那に向かって言う。
旦那は素直にうなずいて、空中に陣を書く。

「園田幸音が許可をしよう。禁忌『終焉戯曲の術』の使用を」
「ありがとう旦那」

一言だけ告げ、兄貴ときせらに視線を配る。
兄貴は1つの巻物を空に放ち、言葉を吐き出した。それに合わせて、きせらと俺も動く。

「「「我ら、甲賀流忍術家『猿影』の名に懸けて、ここに術式を展開する」」」

巻物から、文字が浮き出てきた。

「「「記された戯曲を終わり、新たな曲を奏でよう」」」

さぁ。これでお終いだ。

「「「終わりを始まりに、始まりを永遠に。終焉に、終止符を!」」」

光が生まれたような気がした。


*****

怖くない。

もう独りじゃないのだから。


※次回、最終回!
お見逃しなく!