BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 戦国BASARAでBL「忍、恋愛涙弐ー猿影彼方は俺の嫁!ー」 ( No.44 )
日時: 2010/09/16 16:32
名前: 月女神 (ID: GlvB0uzl)

風魔編 第7話


「我、汝の力を解放す。我の手足よ、力よ、悪を喰らい、大きく育て!」


俺の中に眠る『俺』を解放する呪文。
手足に闇が纏われ、大きく揺らめいた。手に持つ苦無がやけに小さく感じる。

「守らなきゃ」

皆を止めさせなきゃ。止めなきゃ。
殺すんじゃない、守るんだ。

「止めろぉっ!!!!」

次の瞬間。


「楽しそうな事をしてるんじゃない、翔。うちも混ぜてよ」


空が落ちてきた。

じゃなくて、空色の少女が茶髪の青年を連れて落ちてきた。
寧ちゃんだ。連れているのは、前田慶次だった。

「はろはろ。風の死神、風浪寧、いざ死神参る!」
「何なに? 何やってるの、彼方争奪戦争?」
「「「んな訳、あるかっ!!!」」」

ハッ、思わずツッコんでしまった……。
あ、皆の視線が痛い。ものすごく痛い。とんでもなく痛い痛い痛い。
あぁ、誰か助けて。

「彼方、お前無事だったのか!」
「兄貴は来るなぁぁぁぁ!!!」

ちょ、今ヤバいよ。『自分』の力を解放してるんだもん。殺しちゃうよ。
あ、兄貴は良いか別に。風魔に兄貴をやってもらおう。

「そういう訳で、ハイ兄貴。死んで」
「え、ちょ、何? 俺死ぬの? 待って待って、まさか俺の先祖に兄を務めてもらうと…?」
「うん、じゃーねー」

すると、風魔が後ろから俺を押さえてきた。

——— 放せ。

俺の中で、何かが蠢く。


ザワザワ、ザワザワザワザワ


それでも、風魔は放さない。

「兄を、殺してはいけない」

それは、前にも聞いた台詞だった。
ハッ、こんな奴の為に手を汚すなって言ってんのかな。それはそれで良いや。
俺は静かに苦無を下ろし、ベルトに収める。いつの間にか、闇も消えていた。
風魔は俺を解放して、トンと背中を押した。

「行け。お前の、大切な人だろう」
「風魔?」

仮面の下で、風魔が笑ったように見えた。


「俺の子孫が、何かしでかしたら小田原に来い。話ぐらいは、聞いてやる」


そう、風魔は言った。

「ありがとう、風魔」


*****

甲斐

「おぉ、彼方よ。よくぞ帰還した」
「いでででで、お館様。鎧、鎧が痛いっす」

首がもげそうになる程の熱い抱擁を受けた俺。苦しいし、息が出来ない。
それに引き続き、政宗が頭をぐしゃぐしゃにしてきた。いつの間に生き返りやがった。
幸村の旦那も、

「彼方殿が、無事でよかったでござる♪」

なんて言って、笑ってくれた。
紅羽ちゃんも

「まったく、私に心配かけさせないでよねっ! 仕様がない子なんだからっ!」

母性本能たっぷりに言った。

「彼方、お帰り。風魔になんかされた?」
「佐助、忍びは皆オカンなの?」

佐助は苦笑しながら「それはないよ」と言ってくれた。
まぁ、俺もオカンだけどね。そこは言えないけどね。

「よう彼方。久々だな」
「慶次ー、おっす」

慶次も相変わらず元気そうで。……ん? 何か、やつれてない?

「あぁ、寧と空から飛んできたから……」
「うん、そう☆」

寧ちゃん、その笑顔は果てしなく怖いです。何されるか分からない。
佐助の後ろからは、翔がひょっこり顔を出した。

「お帰り、彼方」
「ただいま、翔。元気だったか?」
「うん」

翔は勢いよくうなずいた。
うん、皆元気そうだ。

「そう言えば、旦那は?」
「え、幸音君? 知らないな、部屋じゃないかな」

あの時、旦那も元気そうだったし…。それに、目の前から消えちゃったし…。
謝らなきゃな。
そう思い、俺は旦那の部屋に向かった。

「旦那? っとぉ?!!」
「彼方のバカ!」

いきなり枕が飛んできた。投げたのはもちろん、旦那。
ちょ、おい。紙一重でかわしたけどね? 危ないよ。

「旦那、危ないよ。俺、吹っ飛ぶよ?」
「知るか。主が怪我したくらいで、どこかに消える忍びがどこにいる。お前だけだぞ、彼方」

うぐ、おっしゃる通りです……。
旦那は拗ねたように俺に背を向けた。
俺は、そんな旦那に片膝をつき、言葉を紡ぐ。

「すみません、幸音様。俺はダメな忍びでした。今改めて、ここに忠誠を誓います」

旦那は、俺の方を向いた。


「下僕を所望するならば、どうぞお使いください。俺は、あなたにこの身を捧げる忍びとなりましょうぞ」


すると、旦那は答えてくれた。


「堅苦しい事を言うな。……彼方よ、命令だ。また、某の隣にいろ。そして、もう離れるな」


「御意」


「うむ、分かれば良い!」


*****【風魔視点】

彼方は甲斐へ帰って行った。

俺は、彼方の大切なものになれない。幾度も人を殺してきた、忍びだから。
でも、これだけは言わせてほしい。
誰も聞いていなかったとしても、本人がそう思っていなくても、俺の思いは変わらない。

猿影彼方

あんたは、俺が惚れた、最初で最後の人だ。


*****

次回予告!
次回は、風魔編のもう1つの話で、元喜と元千代がメインのシリアスな話です。

テーマソングは、ポルノグラフティ『アゲハ蝶』
予習をしておこう!

元千代)次回からは、俺が登場するぜ!
元喜)フン、我がメインなのだからな。
元親)野郎ども! 出航の準備だ!
手下)兄貴ぃぃぃぃぃぃ!!!!!
元就)うるさい、黙れ。日輪に焼かれて死ね。

瀬戸内コンビでお贈りします。
風魔編裏話。 『アゲハ蝶』

お楽しみに!