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Re: 戦国BASARAでBL「忍、恋愛涙弐ー猿影彼方は俺の嫁!ー」 ( No.51 )
日時: 2010/09/21 15:52
名前: 月女神 (ID: GlvB0uzl)

瀬戸内コンビ 『アゲハ蝶』第5話【元喜視点】

あの時、海琉に1通の文を渡した。
相手はあのバカに。
せめてもの、口では言えないけど謝っておいた方が良いだろう。
我はあのバカは好きではない。むしろ、大嫌いだ。もう吐き気がするぐらい大嫌いだ。
あんな姫若子、誰が好きになるか(つーか、姫若子って元親だけじゃね? By作者)

「フン、誰があんな奴なんぞ…」

でも、本当は心の奥では別の感情がある。もやもやした、こう——— 我でも解明出来ない気持ち。
後悔をしているのだろうか、あのバカにあんな事を言ってしまったから。
すると、後ろから「どうしました?」と声がかかる。
言わずもがな、月の死神の夜闇五月だ。

「何か用か」
「いえ。ですが、元喜様。こんな夜半まで起きていられるのはお体に触ります」

早く床につかれてはどうでしょうか、と五月は言う。
だが、今はまだ起きていたいのだ。

「いや、もう少ししたらにする」
「分かりました。では、あともう1つ——。お客様です」

五月はそう言うと、我の前から姿を消した。

「いやいやいや、どうも。こんな夜半に申し訳ございませんね、毛利元喜君」

あのバカ、もとい長宗我部元親に仕える死神ではないか。
その死神はニコニコ笑いながら、我に近付いてくる。
自然と、我はヨーヨーに手を伸ばしていた。

「近づくな。殴るぞ」
「おー、怖い怖い。でもね、俺はあんたを攫いに来た訳でもないし、殺しに来た訳でもないんだよ?」

じゃぁ、何をしに来た。

「俺はね、あんたを導きに来たのさ」
「導く?」

導く? そんな言葉、くだらな過ぎる。
何故我は、こんなおちゃらけた奴に導かれなければならん。笑えてくる。

「あんたは、もう戻れない。この『運命』っていう戯曲の上に立っている役者なんだから」

戯曲? 何故、我はそんな物の上に立っている。
知らない。
聞きたくない。

「君が、その銀のペンダントを元千代にもらった時から始まったんだ。素直になりなよ」

誰がなるか、素直になんて。
良いから黙れ、もう口を開くな。
そんな事は言えずに、我はただ黙って聞いていた。

「だから、導いてやる。戯曲のラストまで」

その死神は、深い深海色の大鎌を振った。
すると、色鮮やかなアゲハ蝶が我の前を通り過ぎる。それは、とても儚げに。優しく。
死神はにっこりとした笑顔で言った。

「あれ、追いかけな。答えにたどり着くから」

その言葉を聞いた瞬間、我は蝶を追いかけて月夜の安芸に飛び出した。


*****

「どういうつもり?」

五月は、潤に訊いた。その声は、恐ろしく低い。
しかし、潤はそんな五月に目もくれず、あははと笑いながら答えた。

「答えが見えてるのに、押しこめるなんて可哀想じゃない。だから、答えに導いてあげたの」
「どうして、元喜様なの?」

次の瞬間、潤は深海色の鎌「水神(ミズカミ)」を抜き、五月の首元に刃を当てた。
五月も同等に、銀色の鎌「月神(ツキカミ)」を抜き、潤の腹に押し当てていた。
2人の表情は「無」表情。笑ってもいないし、怒ってもいない。
ただあるのは、殺気のみ。

「言ったじゃないか。あの2人はね、戯曲の上に立っている役者——— いわゆる、ロミオとジュリエットだよ」
「またそんな、未来の言葉を使って…。今は、任務で戦国に来ているのよ」

うるさい娘だね、と潤はつぶやくと五月から水神を放した。
五月は眉をひそめ、首をかしげる。

「どういう、つもり?」
「残念だけど、仲間と殺し合う為に来たんじゃないんだ」

潤は、水神を夜空に投げた。手に戻ってきた水神は、小さな鈴の形になっていた。
五月も、月神をバトンのように回して、小さな鈴の形にする。
夜空では、大きな大きな満月が輝いていた。

「まぁ、覚悟しといた方が良いよね」

潤は、赤い手すりに足をかけ、その上に乗る。そして、五月に笑いかけた。
五月は、無表情のままで訊く。

「何を、覚悟しておくの?」
「それは内緒。俺も確信はないけどね…。五月、毛利と長宗我部、手を組もう。その方が良いよ」

どうして、と五月は訊いた。
潤はため息をついて、こう告げた。

「危険が、迫っているからね」


アゲハ蝶を潰すかのように。

はたまた、手に止まってと言うかのように。

差し出した手は違う。

死神は、そんな戯曲の役者に何と声をかけるだろうか。