BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 戦国BASARAでBL「忍、恋愛涙弐ー猿影彼方は俺の嫁!ー」 ( No.64 )
日時: 2010/09/27 15:42
名前: 月女神 (ID: GlvB0uzl)

金色姫編 第5話

まさか、きせらが上杉にいるとは思わなかった。
何でいるんだろう。兄貴がうざすぎて、敵になったとか? うわー、怖い。

「どうしてだよ……」

俺は月夜の縁側に寝転がる。そして、両腕を頭に乗せてつぶやいた。
大切な家族が、敵になった。ただそれだけの、事実なのに、何故こんなにも悲しくなるのだろう。
裏切られた、というそんな酷く重い感情。

「彼方、きせらが…」

そう俺に話しかけてきたのは、原因を作った兄貴。
面影は真剣で、いつもあの変態そうな表情は浮かべていない。

「知ってる」
「何で…?」

ついて行ったから。皆に内緒で、戦を傍観していたから。
少しだけ、悲しい気持ちになったような気がした。

「そっか……。俺がいけないんだよな、情けない」
「自覚してるのかよ」

酷いな、と兄貴は軽く笑いながら言った。

「元の原因は俺にあるんだし。彼方は、そんなに傷つかなくても良いんだよ?」
「分かってるよ」

分かっている。
この問題は、兄貴が解決するべきなんだ。
でも、なのに。なのに、悲しくなってくるんだよ。裏切られたのかって思うんだよ。
その時だった。


「卿は、猿影兄弟であるかな?」


渋い声。聞いたことがあるぞ。
松永久秀だ。
そこには、甲斐の庭に降り立った白黒のおじさんがいた。ちょんまげが笑えてくる。
兄貴が忍者刀を構えて、松永に向かって叫ぶ。

「何者だ!」
「私は松永久秀。猿影兄弟、私の下で働かないか?」

厭らしい笑いを浮かべながら、松永は訊いた。
途端に、虫唾が走る。あー、嫌だ。ものすごく嫌だ。

「「だが断る」」

俺と兄貴の声が、そろった。
松永はけらけらと笑うが、やがて目だけをこちらに向ける。

「仕方ないな」

その時だ。
炎が俺らに襲いかかった。
何だこの炎、まるで蛇みたいだ!!!

「風/叫べ/この場に/刃となれ!!」

兄貴の声が、月夜にこだまする。
風が起き、炎を揺らめかせた。だが、まだ炎は立っている。

「風刃・空狐フウジン・テンコ

風が炎を消した。だが


「甘い」


また炎が燃える。今度は、勢いがすごいものだ。
それが兄貴へぶつかる。

「ぐっ……!!!」
「兄貴ぃ!!」

俺が兄貴の傍に駆け寄ろうとした時、兄貴が来るなというように手を伸ばす。
松永が、兄貴を担いだ。

「では、失礼しよう。こいつは人質として、もらっていくよ」

松永は俺に背を向けた。
気絶した兄貴が、小さく口を動かしたのが見えた。


『        』


松永は、闇夜に消え去った。
兄貴が最後に言った言葉は…。


「きせらを、頼んだぞ」


「兄貴ィィィィィ!!!!」

俺の叫びは、空に響いて消えた。