BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

第二十七話・・・抉、快、χ。 ( No.113 )
日時: 2011/03/05 19:32
名前: マッカナポスト (ID: AEu.ecsA)

「_______あのぉ?」・・・唐突に口を開いたのは虚だった。

「「あ」」二人が同時にあんぐりと口を開けたと共に、虚は最大限の怒りをその美しい瞳にゆらゆらと湛え、投げ遣りに口を引き攣らせた。
「ごっごめんってば、ね?・だっだっだから落ち着こう?ね?」
必死で謝ろうとする拓夢だったが、彼にしては珍しくまったく言葉になっていない。一方の優大はぽかんと馬鹿みたいに口を開けたまま棒立ち状態と言うひどい有様。



恐ろしい鬼のような形相のまま口を開けようとした虚だったが、少し落ち着いたのか言葉を出さないまま口を閉じた。



「・・・・まさか俺のこと忘れてんじゃないかと思って帰ってきたらドンピシャで二人でイチャイチャしてたってどういう事だよ?」
「え?いっいや忘れてないよぉ!!虚ちゃんの事忘れるわけないじゃんっ!!!ねぇっ?優ちゃん!」
「・・・・・」まだ棒立ち状態の優大を必死で反応させようとするも、まったく意味が無い。
「______まぁ、この先怒り続けたってどうもならないから今回は此処までにしておくが・・・」
「ありがとう!!!・・・・ございますっ!!」
「次同じようなことがあったら、全員修行僧になってもらうから覚悟しとけよ?」______つまり次同じことがあっても結局3人一緒じゃん。そう心の中で呟いた拓夢は、虚に気づかれないように微笑した。


「それと、もう一つ話がある」
「話?」優大がやっと意識を取り戻し、今日初めて口を開いた。
「この工房のはす向かいにある煙草屋が先月潰れただろ?」
「あ、そういえばそうだったな」実はそんな事微塵も知らなかったのだが、優大は一応口を合わせておく事にした。
「そこに、若者向けの洋服の店が出来るらしい」
「やったぁ!!じゃあメイド向けのロリータファッションも売ってるよねっ!!」そう冗談で言ったつもりだった拓夢だったが、
「ああ、そうだろうな」と虚にあっさり返されたことにショックを受けた。
「ちょっと今日の虚ちゃん冷たい!!」
「いや、怒ってる訳じゃなくて本当に売ってる・・・・はずだ」
「「は?」」当然二人の頭に浮かび上がる疑問符。
「なんでそう言えるんだよ?」優大が先に口を開き虚に問う。
「実はそれが本題なんだが・・・」そう小さく呟いた虚は急に誰も居ないはずの外に出て、外に向かって手招きした。





「あの・・・・僕はこういう者です」そう小声でぼそっと呟いたその男は、手馴れた手つきで優大達に名刺を差し出す。
「じょうのうち・・・・みなもと?」
「いいえ、“源”と書いて“みなと”と読みます」まるでマニュアル通りと言わんばかりに、源と名乗る男は微笑んだ。

「実は、この人がその店の店員の一人なんだが・・・・俺のクラスメイトなんだ」虚がなぜか恥ずかしそうに打ち明ける。
「ああっ!!!城ノ内先輩!!・・・虚ちゃんと仲良くしてた!!」拓夢はその端正な顔立ちから一瞬で彼の正体を悟った。
「よく覚えてるねぇ・・・。こんな顔の一部に包帯巻いてるような出で立ちで」源は驚いたように笑った。
「ああ、確かに見覚えあるかも」遅れて優大もその正体に気づいたようだった。
「君たちの事もよく覚えてるよ」過去を懐かしむように源は呟く。
「あと、ロリータファッションも売ってるとの話ですが」拓夢が尋ねると、
「ああ、こう見えても僕はヲタクでロリコンだからね」いきなりの爆弾発言に動揺を隠せない拓夢と優大。
「ヲタクでロリコンって事は・・・好きなアニメは?」
「プリ●ュアとか、まど●ギとか、りるぷ●とか」
「はは、完全にロリコンの王道突っ走っちゃってますねwww」
「拓夢、君は僕のこと呆れてるのかい?」
「いやぁ、話が合いそうだな・・・・と。」
「!!!!!」感動しているのか、源は目を大きく見開くと、拓夢の小さな手をガシっと握りしめた。
「よろしく!!!僕の店にも来てね!!あと普通の服も当然だけど売ってるからさ、おいで!!」
優大と虚はそんな二人の姿をぼーっと見つめながら、このままこの店がこいつのロリコン色に乗っ取られないか心配になるのであった。