BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

第三十一話・・・卑猥で狂おしく、愛しい愚民共め。【前編】 ( No.143 )
日時: 2011/03/27 19:12
名前: マッカナポスト (ID: gB.RcQK6)

先程までの曇天が嘘のように、空は眩しく、それが優大には鬱陶しかった。太陽光は優大の銀縁眼鏡を激しく反射し、優大は思わず目を細めた。
物怖じしながらも勇気を振り絞り、工房を飛び出した優大だったが、結局はす向かいに洋服店がある訳で、優大は意気込みがまるで水の泡だ、と小さな声で呟いた。
そんな中、まったく空気を読んでいない禅は、「おーーーーーーい」と低い声だが子供のような無邪気な音を出して優大を呼ぶ。

「ど・・・どうも」優大は彼の不気味なテンションに付いて行けず、どもりがちの声でぼそっと呟く。
「ふふっ、意外と人見知りなんですね」先程のテンションとは打って変わって、禅は天使のような笑顔をふわりと浮かべた。
_____優大は思わず心が揺れ動いた。
しかし天然な優大でも感じた事がある。_____つかめない男だ。
「どうしたんです?・・・僕がつかめない男とでも?」こいつプリーステスとか錬金術師みたいな特殊な職業なのか・・・?
非現実的な言葉を並べる優大だったが、禅は天使の笑顔を貼りつけて囁く。
「実はね、僕、“見える”んだ」
「はぁ・・・。」思わず呆けた溜息が漏れる。
「妖精のナターシャさんです、君には見えないと思いますが・・・まぁ、優しくしてやってください」禅のマイナスイオンを周りに湛える、癒しのシンボルのような、そんな声が優大にはたまらなく快かった。
「_____禅さんの声って誰かに似てると思ったら・・・・僕の」その言葉は禅に遮られた。
「君の大切な人なのかい?」








「ははっ・・・・・だからか・・・・・貴方が僕の事分かるのは」
「ばれちゃいましたか?」
「どうやら」優大はあどけない笑みを浮かべた。
「整形でもしたんですか・・・・?」あどけない笑みを変えぬまま優大は禅に訊く。
「いやいや、そんな事してませんよ、でも痩せました、ね」




























「お久しぶりです、“沢村副会長”」
「こちらこそお久しぶり、菅野君」
二人の鼓動と周波が同調し、二人とも緊張感のこもった笑顔を浮かべる。






まだ会ってから2分しか経っていないのに、優大は随分長い間立っている気がした。


















「もう半年経ったんだね・・・。“半年前の件ではすまなかった”」
「“悪いのは沢村副か・・・・じゃなくて禅さんじゃないですから”」









一瞬、優大にも妖精が見えたのは気のせいだろうか。