BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- 第三十五話・・・大丈夫じゃない、問題だ。【前編】 ( No.168 )
- 日時: 2011/04/30 18:06
- 名前: マッカナポスト ◆dDspYdvRLU (ID: 3lsZJd9S)
- プロフ: http://www.youtube.com/watch?v=nt5RuhhIUFs
優大がいない工房内。
主の消えた工房は、どこか寂しそうにぽつんと聳えていた。
虚は何故だか胸の中に去来するこの変な緊張感が解らぬまま、ただソファーに凭れ掛かり、つまらぬテレビ番組を観るだけの退屈な午前を過ごしていた。
拓夢は拓夢で、「優ちゃんはどこに行ったのか」と聞くだけで虚に厄介払いされ、機嫌を損ねるばかり。結局ベッドのなかで悶々と独り言を呟きながら、ギャルゲ攻略に一日の労力を使い果たそうとしていた。
しかしその奇妙なまでの静寂は、一人の人間によって打ち消される結果となった。
その有様に釘を刺すかの如く、喧しい声で一喝。
「かああああああああああああああああああああああああつっ!!」
「!!?」虚は本能的に辺りを見回し、拓夢はなぜかギャルゲのデータをセーブしながら戦闘形態突入。
「うるせぇなぁ朝っぱらから……」声の主を理解したのか、虚は鬱陶しそうに頭を掻きながらぼそっと呟いた。
「なぁ虚、禅が店の裏庭から戻ってこないんですけど。俺良い子だから裏庭の様子覗いたりはしないけどさ。俺的には禅は優大と話し込んでるんだろうな、と。あいつ等大学の同級生だったらしいからな」
「俺良い子だからって……。それより挨拶が抜けてるぞ源。『礼に始まり礼に終わる』、この言葉は剣道だけではなく日常生活にも______」
「あーーー判ったから判ったから!!お前のその言葉聞いたの6年振り位だね、懐かしいと言えば懐かしい」
「そんな事はどうでも良い!!」
「お前が言った言葉のくせに」
「バーカバーカ」
「ちょおま、何『チ○ノのパーフェ○トさんすう教室』的ネタ使っちゃってるんですかっ!!『馬鹿』っていうと『馬鹿』っていうみたいな?金子み○ず的な?ktkrwwまったく虚ちゃん可愛いんだから、え?」早口に、且つ流暢に紡がれる単語に虚は付いて行けず、とにかく適当に怒っておこうとツッコミ役として謎のプライドを見せ付けようとしたその時。
「うっへい魔王降臨っ」源の謎の単語と共に、憎悪に満ちたあくどい笑顔で魔王(田丸拓夢)が降臨。
「うるせぇなぁ朝っぱらから…!!」奇跡的に虚と同じ言葉を発したのを源は感心したものの、それを言葉にするのには相当の勇気が必要だと悟ったらしく、そのまま口を閉じる。
「お前俺と同じ事言ってるぞ」
「言われたあーーーーーーーっ!!?」遂に感情が我慢できず発狂。
「「何がだし」」
「脅威のハモリっぷりに俺感動を超えて尊敬するよ!!?」
「いやさあ、朝から元気なのは(僕的には)良いと思うけどね、僕の親愛なる寧々ちゃんとのハッピーライフの邪魔をしないでくれない?」
「おぉラブ○ラかぁ!君も寧々ちゃんだったか……寧々ちゃん人気は驚異的だからね…。でも俺の嫁はみんなの嫁さっ!!みんなで嫁を共有しあおうぜ!!!」本日一番の笑顔に、虚は殺意を抱きかける。
そして小さな声で呟いた。
「______この能天気のボンボンが」
虚は恐ろしい薄ら笑いを浮かべながら静かに深い溜息を吐いた。
「ちなみにお前、なんで此処に来たんだ?」虚は源の熱弁を掻き消すように唐突に聞く。
「いや、暇だからさ。この通り店も休みだし?僕の昼寝場所の裏庭は優大君と禅のスーパーフラグバリアで包囲されてるし?」拓夢はただただ悶絶するばかりだった。
_____源サマの厨二病が此処まで進行していたとはっ……!!ますます尊敬しちゃうぜ、輝いてるよ源サマ。
拓夢までもが奇妙な感情ルートを突き進む中、虚はおかしくなっている二人の軌道を必死に修正する難役に就き、苦戦するばかりで。
「まぁ、この城ノ内源サマが言いたいのは_________」ひょい、と工房の中心部に位置するバーカウンターじみたテーブルに腰掛け、一言。
「映画観に行こうぜ!!」
「ごめん、俺は狩りに行ってくる」
バタン、という虚しすぎる扉の音と共に、結局魔王(拓夢)にあっさり拒絶された。
「じゃあ虚、一緒に行ってくれない?」
_____何てポジティブな奴だ。
このまま断ったらこいつが哀れな気がして。
同情。
同情_______だよな。
「仕方ねぇな………」
「よっしゃ!!マジで!!?本当!?……良かったわ俺マジでこのまま断られたら青酸カリ飲んで長門の抱き枕抱いて自殺する所だった!」何とも非現実的な台詞を高めのテンションでまくし立てる源を見て思う。
_____昔から変わらないな、本当に。
恥ずかしいからじゃないけど。
そんな台詞、言えるわけ無いだろ。