BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- 第三十六話・・・大丈夫じゃない、問題だ。【前編2】 ( No.177 )
- 日時: 2011/05/08 15:38
- 名前: マッカナポスト ◆dDspYdvRLU (ID: .X/NOHWd)
- プロフ: http://www.youtube.com/watch?v=H70BiwanBwU
____地球とは広いものである。
失意と過去の残像に呑まれ、涙に埋もれている優大と禅。
その直ぐ近くで、笑いあい、時に冗談を混ぜ雑談を続ける虚と源。
そして何もせず、感情を持たず、ただただ画面上で不敵な笑みを浮かべる拓夢。
半径50m以内で、喜怒哀楽の日常が繰り広げられている。その幅を世界規模に広げていけば一体幾つの感情と巡り会い、幾つの生と死に巡り会うのだろう。想像するだけで世界の広さを思い知らされる。
【怒、そして喜】
_____源が強引に虚を誘拐してから25分が経つ。
虚は顔を歪ませ、必死に笑顔を作ろうと顔を益々引き攣らせる。
「早くしろよ……」ついつい出てしまった言葉に、虚は思わず口を塞ぐ。
しかし源はそれを見逃さなかった。
「虚っ!!女子って服とかに迷うだろ!!?俺は只その感じを味わいたかっただけなんだよ!分かる!?」
「あのなぁ_____お前ツッコミ所が多すぎなんだよ……。まず!最初に映画館に行こうと俺を誘導尋問したのはお前だ!!なのに何故その当本人がそんな事で愚図愚図してるんだよ……!!」虚は一息吐いてから、その続きを再び早口に(源のように)紡ぎ始める。
「あと!!お前は女じゃねぇ、男だ!!オカマぶってるなら地獄に堕ちるか覚醒剤飲んで朽果てろ!!!」理不尽にも程があるが、虚の言葉は核心を突いている。
「最後にっ!!今現在お前が悩んでるのは服なんかじゃなくて車で流すCDだろうが!!?しかも何だこの九割二分がアニソンと言う酷い有様!!(ちなみに残り八分はネトゲ曲)お前、“あの事”もう忘れたんじゃねぇだろうな___」突如源が虚を上回る早口で口を挟む。
「ああっ!!すっかり忘れてた!!あの(最初で)最後の彼女との初デートでアニソン流しすぎて彼女にドン引きされた件っっ!!」
「俺は覚えてるぞ、お前のCDは一曲目からいきなり『ふぃぎゅ@』で始まって二曲目は『GONG』…しかも当時お前がスパ○ボ厨最高潮の時期だったからお前がめちゃくちゃテンション上がって熱唱してたからますます彼女にドン引きされたっ!!三曲目は『みっくみっくにしてあげる』!!当時初音ミクが発売されたばかりだったからお前はストラップまで初音に___」
「何で虚、お前其処まで知ってんの!?」
「お前がその夜俺の家まで来て一日にして彼女にフラれた過程を涙目で熱弁してただろうがっ!!!」
「………そんな事あったような無かったような……」
「お前の記憶力はミドリムシ以下だ」虚にぴしゃり、と撥ね付けられてしょんぼりと頭を下げる源。
「あのなぁ……お前泣けば良いと思う女みたいな考えじゃ____」
「違うっ!!」
「はぁ?」
「いや……虚が其処まで覚えてくれてたんだなぁ……って」
「当然だろうが、何年お前と一緒に居ると思ってんだ」
「虚おぉっ……!!」
____うわぁ、また面倒な事になった……。
感涙し自分の胸に顔を埋める源を見て、ふとこんなことを思う。
____これから一生、こいつの我が侭に振り回されなきゃいけないのか……。気が遠くなるな………。
でも、悪くは無いかもな。
そんな事を思いながら、少しだけ顔をほころばせると共に、いつもの様に怒号を響かせる。
「そんな所で愚図愚図してないでとっとと準備しろこのミドリムシ以下の単細胞人間が!!」
「えっ、じゃあアニソンぉk的な……?」
「そんな訳_______」
刹那、源が下等手段と言うべきか涙で瞳を潤ませる。
_____うわぁ、もっと面倒臭ぇ………。
「仕方ねぇな______」
「っしゃ!!マジで!!?俺このまま断られたら______」
「分かったから、青酸カリ呑んで長門の抱き枕抱きながら死ぬのだけはやめてくれ」
「俺が同じ台詞は二度と使わない事位知ってるだろぉっ!!?」
「五月蝿い五月蝿い、お願いだから俺に同じ事言わせないように早く準備を済ませろ!さもなくば映画館無しにするからな……」
「何か疲れたし行かなくてもいいかな……って」
「はぁぁぁぁぁぁ!!?」全くこいつは挙動不審な奴だ、と思わず本日最大の溜息が漏れる。
「ってのは嘘〜♪」
「あのなぁ_______!!」
虚が顔に怒りを湛えたその時。
「あの、五月蝿いんだけど」魔王田丸拓夢、遂に降臨。
「魔王降臨っ!!!!」
「あ、ごめんな拓夢」虚が拓夢に軽く詫びの言葉を入れた刹那、源は頭に豆電球を浮かべるかの如くこう呟く。
「魔王さんも、映画館行っちゃう?」
この地球には魔王という名___あるいは種族___の人間が存在するらしい。
全く、地球とは広いものである。