BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- 第三十七話・・・大丈夫じゃない、問題だ。【後編】 ( No.182 )
- 日時: 2011/05/15 20:30
- 名前: マッカナポスト ◆dDspYdvRLU (ID: hzhul6b3)
- プロフ: http://www.youtube.com/watch?v=EQQgI0ZE2hI
【怒、呆、そして偽】
魔王は云う。只管に笑みを貼り付け、仮の笑顔を毒々しい一輪の華の様に輝かせながら。
「君馬鹿?いい加減呆れたんだけど」
「ちょっとお前言い過ぎな気が____」虚の情け深いその言葉は拓夢に阻まれる。
「虚ちゃん、僕は行かないよ?今日の休暇も源サマが此処にこの時間に来たのも全て_____」
「言うな」源が静かに拓夢の声を空へ掻き消す。
「言わない方が良いの?案外大した事無いんだねぇ、源サマ?」冷酷に、且つ羽虫を追い払うかのように面倒くさそうに話す拓夢。
「いや、言いたい時に言えればそれで良いかな…って。大した事でもないし?」ほう、と何かに感心した素振りを見せる拓夢だったが、虚は何を話しているのかさえ分からない為、呆けた顔で二人の対話を見つめている。
「で、何で僕を誘ったわけ?何の利益にもならないのに」
「____俺って気分で動く人間なんだよ、それだけの事さ」意味深に虚に対して上目遣いを送る源。
「ねっ?お願い!一緒に行こうぜ…つか来いよ!!」
「二人で…行ってきて、僕は優ちゃんを待ってるから____」
「何そのフラグ素敵っ!!流石僕の拓夢ちゃん!!」
「だから、二人で行ってきてくれる?」
「了解っ!!君のそのフラグ的展開に心から協力するっ!!」歪んだ感情が入り混じっての了承だったが、これで一件落着、と拓夢は安心した顔を見せた。
何故其処までして行く事を拒むのか、いまいち虚には理解できなかったものの、やっと落ち着ける、とそっと胸を撫で下ろした。
「じゃ、虚、行こうぜ」
その一声で源は虚の頼りない手を優しく包み、あまりにも唐突に工房を出た。その後ろ姿を拓夢は少し寂しげに見つめて送り出していった。
【車内にて】
「虚って手、小さいんだね」不意に口にした他愛も無い一言になぜか虚は過剰に反応した。
「あのなぁ……っ!!」
「いやいや、ただ可愛い部位もあるんだなぁ…って」
「部位って人を牛みたいに扱うなっ!!!!」的確なツッコミに思わず感嘆の声を上げる源。
「あ、ごめん、間違えたww」
「笑って済まされると思ってんのかこの単細胞キモヲタが!!」
「キモヲタかぁ……。そんな事言わないでよ、今回はアニメ曲の中でもいい曲集めたんだから!!今流れてるのが『ダイヤモンドクレバス』だよ、いい曲でしょっ?」___こいつ本当にアニメの話する時は瞳が輝いてるよな…。アニメ以外は興味ないんじゃないか、こいつ…。
母心とも言うべきか、これからの自分たちの行く末を心配する虚であった。
「まぁ確かにいい曲だが…俺は知ってるぞ、どちらにせよスパ○ボ関係じゃねぇか!!」
「そうそう、スパ○ボでマク○スF知ったんだよ…。懐かしいなつかよく分かったな虚!お前も立派なスパ○ボ厨…」
「ふざけるな!!お前のせいでどんだけ今まで苦労してるのか知ってるのか!!?お前のせいでな_______」
以下略。
「ときに、源」
「何?」不自然な話の切り出し方はあえてスルーした源。
「____お前今日何観るんだ?」
「ああ、言ってなかったな、プリキ○ア」
ひと時の快い沈黙と共に偽りの笑み(そして棒読み)が源の純粋(?)な瞳を恐怖で埋め尽くす。
「よし、俺は帰るぞ、あと隣の席で車運転してるアニヲタのゴミは荒川に処分して…」
「だめだよ虚、荒川に処分してもリクとかニノとか村長とか星は出てきてくれないよ!!?」明らかに言っている事が食い違っているので虚は呆れ笑い___実際偽りの呆れ顔なのだが___を浮かべると共に一言。
「お前の事がますます嫌いになった」
「えっ_________」一瞬顔を歪ませ、源は続ける。
「じゃあ前は俺のこと好きだったんだね?」
もう虚は溜息を吐くしか術がなく________
源はそれをきょとんとした犬のような眼差しで見つめるばかりだった。
そして虚は今までの二人の長い道のりを思い出すのであった。
【道のり=時間÷距離】=【道のり=妬み×理想】
それが、僕たちの、道のり。