BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- 第四十五話・・・纏獄 ( No.274 )
- 日時: 2011/08/24 16:34
- 名前: マッカナポスト ◆dDspYdvRLU (ID: g5yX4cMd)
- プロフ: http://www.youtube.com/watch?v=XHLLZKbRX3Q&feature=related
とりあえず店の古びたシャッターを下ろす拓夢。
先代から引継がれた時の儘のシャッターは、真新しい店内とは相反しており、寧ろ古き善さを醸し出しているようだった。
__もうすぐ此処に来てから1年になるんだよな。
充実感が胸を満たす。
五月の柔らかな日差しが拓夢の頬を撫でると、ますます清々しく感じられた。
古臭い何処か哀愁のあるチラシの裏紙を用いて『本日休業』と一筆。
「こんなもんかな」満足そうに笑みを浮かべ、拓夢は重い荷物を微かに震えながら持ち上げる。
「お前何でそんなに荷物あるんだよ……?」
「いや、全然足りないくらいだよ?__こんな俺がメイドに変化する為にはメイクだってあるしヘアケアとかもあるし普通の女子以上の気合いを入れなきゃ駄目なんだよ」
「あ、何か役に立ちました」
「なら良し」
上下関係が逆転したところで、真織は拓夢の手を素っ気無く奪う。
拓夢は全く動じないような態度を取っていたが、その瞳は明らかに動揺していた。
「はいよ、お嬢様」
「素っ気無いなぁ、もうちょっと執事なら執事らしく___」
「お手をおとり下さいませ、お嬢様」
威厳に満ちた、執事と言うより王子のような優しい声と笑みを浮かべ、色気のある純白の手を、そっと拓夢の手に包み込む。
「……それじゃあ既に……手を奪ってるでしょ」
顔を赤らめながら、必死に声色を下げようとする拓夢の姿は、人間の何処かに潜む母性本能を擽らせた。
「え?あ、そっか、俺馬鹿だわ」
そんな真織でさえ、顔を茜色に染めていて。
羞恥なのか、切なさなのか。
それは神のみぞ知る。
そして。
例のアレが現れたのは。
そんな戯言を重ねている、下町の道中だった。
しかし。
拓夢は一切、動揺しなかった。
寧ろ、淡々と、且つ飄々としているようで。
「むむた……______!!」
「あ、政孝じゃん」まるで近所の知り合いの如く、さも当たり前のように軽く挨拶する拓夢。
明らかに、全てが違った。
「何だ、“隣に居るの優大じゃないのかよ”……」
確かに、『それ』を言ったのは政孝だった。
全く鼻息を荒らさぬまま、その丸々太った体系だけを残して。
「何?あんた、“源サマから話聞いてないの”?」
「いや、既に居なかった。だから偶然店を出て行った君と隣のそのショタを追っただけの事」
「俺ショタじゃねぇし第一お前誰だよ……キモいんだけど」
「“とりあえず、『政孝』って事で”」
「…………?」真織の頭には只管に疑問符が浮かぶばかりだった。
「まぁ、今優ちゃんは“例のあんたのと話しこみ中”だから」
「過去の話を蒸し返して何になるのやら……」政孝は溜息を吐く素振りを見せると、拓夢に手を振り、別れを告げる。
そして拓夢も軽く手を振り、別れを告げる。
それがさも当たり前のように。
そして真織は、当然浮かぶ疑問符を拓夢にぶつけた。
「あの政孝とか言う人とお前、__あと優大や源先輩か__一体どういう関係なんだ?」
そう言うと。
拓夢は笑みの中にあくどい笑みを少々混ぜ、一言。
「だってお前、口軽いんだもん」
「あのさ、絶対誰にも言わないから!黙ってるから!」
「真織の事は信じたいから今回は言うけど______」
拓夢は隠し味に殺伐とした目線を加え。
真織の首元に、隠しナイフをそっと突き立てる。
あくまでも執事のように、丁重な姿勢で。
殺人鬼のような、真実を見透かしたかのような胡散臭い瞳を輝かせ。
「もし口外したら、ただじゃおかないからね__________」
The worst sin towards our fellow creatures is not to hate them, but to be infifferent to them: that's the essence of inhumanity.
George Bernard Shaw