BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

第四十七話・・・焦燥曲 ( No.292 )
日時: 2011/09/01 18:06
名前: マッカナポスト ◆dDspYdvRLU (ID: Ti.DGgQd)
プロフ: http://www.youtube.com/watch?v=pqmBbYB7AUg

つん、とすまし顔でこちらを見つめる稲穂は、黄金色に輝いていた。
客足を着々と伸ばしつつある工房での多忙な日々はあっという間に過ぎ去り、季節は夏を終えようとしていた、そんな8月31日。

そして本日定休日。

「もうこんな季節か___」疎らに見える稲穂を目を細めながら見つめ、ふと呟く虚。
今年は夏休みという夏休みがあまり無かった為に、工房で住み込みで働く虚たちにとっては、正直あまり満足できる夏ではなかった。

拓夢の知り合いであるフリーライターの縣芽姫威とか言う女が度々現れては、雑誌の連載に付き合わされるし、最近になって毎日のように源が遊びに来るし__とは言えども自分も週一だけ源たちの洋服店を訪ねているのだが__多忙な割に内容の無い夏を過ごしてしまった、と今になって後悔がこみ上げる。


少なからず欲が出る8月。
危機感を覚えた31日。
この机の上で、釜の周りで夏休みを終わらせたくなかった。
最後の日にどうしても、何かしたかった。

やり残してしまった、たった一つの思い出作りを。






【     煌     】





「おっさんの所、行ってくるから」唐突に口を開く。こういう時の行動力は恐らく誰にも真似できないだろう。
「今日は昼から寺で霊媒師の仕事があるって自分で言ってた癖に」珍しく優大が最初に反応した。
「別に大丈夫だろ。今すぐ断ったって寺の住職の代わりで委託されてるだけだし、代わりは幾らだっている」
「……おっさんってお前の叔父さんの事だろ?何処に住んでんだよ?」
「茨城。まだ俺が中学の頃過ごした家に住んでる」一瞬だけ薄ら薄ら浮かべていた笑みが消えた気がした、考えすぎだろうか。





口を開いたのもあまりに唐突だったのに。
腕を組み、気難しげとも言えない複雑な表情を保ち、唐突に一言を放った。
「優大、今日だけ俺に付き合え」


          一瞬の沈黙。


「___良いけど、拓夢は呼ばないのか?」
「着いて来ても構わないが、」
そう言って意味ありげに暫く間を空け、上目遣い気味で優大を見つめる。
「今日は…………俺とお前だけにしてくれ」


美しすぎるほどに中毒的な笑み。
思わずうっとりしてしまうその笑顔は、優大を導くようで。
次の言葉が何故か待ち遠しかった。




何かを思い出したような素振りを見せ、またも唐突に一言。
「あ、でも禅は連れて行きたいな」
「………………」この男、まったく理解できない。天然なのだろうか、天然の自分が言うのもどうかと思うが。
「あぁ?何か悪いのか?」
「_____別に」










こどもみたいにつっぱねちゃうの、ゆうだいのよくないところだよ。
そんな、逢いたくても逢えぬ旧友の声が聞こえた気がした。