BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- 【番外編】運命愛、但し歪【ACUTEイメージ】 ( No.302 )
- 日時: 2011/09/11 21:23
- 名前: マッカナポスト ◆dDspYdvRLU (ID: 7z32XAKr)
- プロフ: http://www.youtube.com/watch?v=8phdFw0tKR4&feature=related
【人間における偉大さを表現する私の方式は、運命愛である】
フリードリヒ・ニーチェ
運命愛は、__ニーチェの言うように偉大である故なのかも解らないが__必ずしも美しいとは限らない。
寧ろ愚かであり、憎悪が全てを覆い尽くす事の方が多いと僕は思う。
電光石火の如く現れ、激しく【ACUTE】愛し愛され、風のように消えてゆく。栄枯盛衰の世の中を生きていく上で、それは必然とも言えよう。
第一、美しい事や物に対して定義する権限があるほどの僕ではないのだ、僕にとって歪んでいるものが美しかったり、美しいものが歪んでいる事だって十分有り得る。この事は当然、今これを読んでいる貴方にも当てはめられるし、世界中の人に当てはめられる。
だが、そんな僕であろうとも、これだけは言える。
激しく【ACUTE】愛されれば愛されるほど、その代償は余りにも大きく、衝動に感情を支配され、心も体も蝕まれる。
否。
それでもその人を愛したいのであれば、『自分にとって』美しくあれ、歪むことを恐れるな。
____仮面の裏を、さぁ、引き剥がせ。
【ACUTE】
■Ⅰ■
何時からか、自分の周りを取り巻く人間達を人と思えなくなってしまった自分が居る。愛し、愛される。そんな人間の生殖手段は自分にとって当たり前であり、人間自体も上辺だけでしか愛せなくなってしまった。
僕を覆い隠す愛が壊れてしまうのが怖くて、その怖さすらも解らない自分がもっと恐くて。そうやって自分は今まで逃げてきたのだと思う。
世界が自分中心で廻っているかの如く、大っぴらな口振りで愛を囁いてきた自分が今では恥ずかしい。
でも、今更気付いても、過ちから逃れることは出来ない。
そんな事も今まで気付かなかったのだろうか。
嘗ては、本気で且つ命懸けで愛し、人生の大切なパーツの一つであった愛人も、ただの人形でしかなくなってしまった。
もう自分は、後戻りは出来ないのであろう自分の人生を投げやりにして、このまま機械のように慣れた作業を繰り返すしかない。
___何時から僕は、歪んでしまったのだろう?
【逃げ出した夜の中で】
■Ⅱ■
欲に溺れてしまった自分が恐くて、でも愛されたくて。そんな感情が複雑に、緻密に交差する。あの頃の、自分を本気で愛してくれた幻想のようなひと時はもう無い。だから、自分があの人にとって只の人形でしかなくなってしまった事は薄々気付いていたし、もう一人の『悪魔』の存在だって、ぼんやりとした物ではあるけれど気付いていた。
でも、今だけでも、自分を見ていて欲しいから。愛してほしいから。
そんな欲望が自分の全てを覆い尽くしていた。口に出せない余りにも大きすぎるその感情は、確実に蓄積し、自分を傷つけ蝕んでいる。その悪魔の存在が明確になった瞬間自分の全ては壊れるのだ、アナタの為ならばその悪魔を殺める事だって厭わない。頭の中に去来する感情が全てあの人で覆い尽くされ、悪魔の存在が徐々に明確になってきてしまった今、この言葉は現実味を帯びてきている。
もう、心の暴走を抑えられない。自我をなぞって、ただ只管に自分の思うがままに進むがいい。
___自分がアナタを愛するのならば、アナタも自分を愛するべきでしょう?
【歪んだ愛の結末には 何が見える?】
■Ⅲ■
自分の友人の愛人に愛される、などと言った非現実的なことがこの世に存在し、更に自分に降りかかってくるなんて、思いもしなかった。
最初は、そこまで興味の無い人間に愛されることに抵抗があったし、友人がどんな顔をするのだろうと思うと顔が青ざめた。
でも、本気で愛してくれているのであれば、それに応えるしかないのだろう……最初はそんな軽い気持ちだった。
だが、結果として愛と欲望という底なし沼に__永遠の闇に__堕ちていってしまった。
罪悪感をも消し去る夜の連鎖は、留まる所を知らなかった。
今となっては後悔も反省も微塵も無い。
確かに、飽きもしないであの人を愛してしまった自分も悪いのかもしれない。
でも、本当にいけなかったのだろうか?
本気で愛してくれるのであれば、それに応えるしかないのだろう__という自分の軽い気持ちの、何処が悪いのだろう?
____あの人にこの今愛されている自分が、一番正しいのだ。
【確かめあったつもりになって】
運命愛の運命の夜は、余りにも唐突にやって来た。
突然鳴り響くベルは、まるで滑稽な自分たちを嘲笑うかのよう。
友情と愛情は只管に絡み合い、交差する。
友情と愛情の調律が奇妙なまでにとれていたあの頃の残像。
激しく愛し、優しく愛されたあの頃の残像。
第三者でしかなく、只の『友達』でしか無かったあの頃の残像。
全てが記憶として蘇り、罪悪感に苛まれてたとしても。
全ては解き放たれ、時は訪れてしまった。
『自分にとって』美しくあれ、歪むことを恐れるな。
【仮面の裏を さあ引き剥がして!】
苦し紛れの言い訳は、只の戯言に過ぎない。蓄積されていた憎悪や欲望は、刃となり、全てを壊してゆく。
『私たちは、あの頃に戻ることはできないのだろうか?』
『………でも、それを壊したのはアナタでしょう?』
そして、捨て台詞のように一言。
『もう遅い。』
そっと首元に突き立てられた矛先は、全てを物語っていた。愛や憎しみに囚われ、余りにもあっけなく終わろうとしている自分たちの末路を、最初から悟っていたかのように。
積もりに積もった憎悪と欲望が弾け飛ぶ。
それに比例するかの如く、嘗て愛を語り合った純白のシーツに、真実の紅がじわり、と染み込んでゆく。
その様は余りにもあっけなくて、虚しくて。
もう一人に矛先を向けたその一瞬の笑みは、優しく美しく、まるで天使のようだった。
『もう遅い。』と再び呟いてから、遺言と言わんばかりに、最期の言葉を耳元で囁いた。
『これで、おわりだよ』
激しく【ACUTE】愛し、愛されたあの頃のひと時は、余りにも虚しく、それでも静かに、ようやく安息のときを迎えた。
全てが終わった、瞬間だった。
闇が深まり 戻れない愛情
鋭く抉る 濡れた矛先
花火の様に 弾けて消えるまで
互いを焦がし 全てを燃やしてく
優しく_________
【fin.】