BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

第五十一話・・・哂う提燈 ( No.312 )
日時: 2011/09/26 18:37
名前: マッカナポスト ◆dDspYdvRLU (ID: GMnx0Qi.)
プロフ: http://www.youtube.com/watch?v=2f0imsDdLEA&feature=related

【   塵   】


何か文句ある?と首を竦めながらへらり、と嗤う犀霞の姿は、邪念やら人間の愚かさやらが籠められている気がして。いや、気のせいなのかすらも判らないから実際どうなのかは定かではないが。

『災』いが、『禍』いが周囲を取り巻いている気がした。

一言で言ってしまえば、『殺』気のような謎の邪気で満ち溢れていた、これほど恐ろしいものは無い。

しかし、今まで概ねの外見しか見ていなかったが、今になって彼の姿をまじまじと見てみると、欠点の無いような美貌の持ち主だった。
四十代前半相応の最上級の美しさとでも言うのだろうか、優大は改めて神々しい何かに感動してしまった。
虚の様な、上品で女性のような婀娜っぽい美しさとはまた違うが、何と言うか、アウトローでビンテージな美しさを持っていた。
決して品が無いと言いたい訳ではないが、常に物事を遥か上から静かに(但し哂いながら)見下ろしている様な、程よく穢れた__真の大人っぽさを感じる。



「私はアウトローなんかじゃないよ?そんな拙い妄想で私の話を逸らすなんて駄目だろう?」
___いや、今一言たりとも言葉を発してなかったのだが。
まさかとは思うが、心の中を見透けるのか……?超能力者なのか?そうだとしたらこの世界どうなっちゃってるんだよ。
此処は『とある』の世界観なのか?


まったく、全て心を見透かされているのは心臓を掴まれているような、空虚の恐怖を感じる。


突如虚が口を開く。
「いや、実は今年のお盆は……いや、それよりも先に二人を紹介した方が早いか」
そう言って虚は優大の首をつかみ、強引に前に突き出す。その衝動で優大は躓いた様な情けない姿勢で犀霞の胸に飛び込む結果となった。
すっと血の気が失せて顔面蒼白になりながら態勢を立て直し、大袈裟に一礼する。

「……あの、えと、はじめまして、虚……先輩?の後輩の管野優大……です」

ふんふん、と値踏みするかの様にしげしげと眺める犀霞だったが、ようやく口を開いた。
「なになに、虚、お前は後輩の男まで手玉に取ったのか、後輩なら女にしろと言ったでしょうが」そう言葉を放った瞬間、虚が微かに笑みを浮かべた気がした。
「そんな事は無しとして、俺がいまちゃんと住み込みで働いてるって言っただろ?こいつがその店……というか工房の主人」
「はは〜ん、その様子だと其処に拓夢君もいるね?聞いたことある名前だと思ったらそういう事か、成程」
「……んまぁ、そういう事になるな」
しかし犀霞は其処に関しては深入りせず、すぐに話題を移す。
「で?もう一人のこの妖気を放つ可愛い子は?」

「……僕は藤堂君の中学からの同級生の黛禅です」教科書的に自己紹介をしているようだが、実際結構機嫌が悪いのだろう、犀霞を睨み付けながらの自己紹介である。

「ああ、茶道部の禅君ね、そんなに機嫌悪くしないで、名前は虚から何度も聞いたことあるよ」宥めてるのだろうが、実質へらりと哂いながらなので軽薄で皮肉くさい糞爺にしか見えない。





「中一の頃はあんまり仲良くしないまま虚が引っ越しちゃったからね、実質仲良くし始めたのは高校からか」遠い目でそっと呟く犀霞。その笑みは相変わらず皮肉くさかったが、何となく憐れみの様な感情が入り混じっているような気がした、何に対してなんて知る由もないし知りたくもないのだが。


それでもその心情を読んでしまったのか、いかにも『何に対して』かを語るような素振りを見せる。
「懐かしいなぁ、虚が一番辛かったのは中一の頃だったからね」



虚の顔が、大きく歪んだ。