BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- 後日談・・・暗礁と感動 ( No.352 )
- 日時: 2011/12/22 21:31
- 名前: マッカナポスト ◆dDspYdvRLU (ID: F1B4nr3O)
それから30分後。
すっかり夜も更けてしまい、家路に帰ろうとした虚達だったが、犀霞がなかなか返してくれないようで必死に抵抗する有様だった。
「それにしてもおめでとう、虚」犀霞が屈託のない笑顔で褒め称える。
「おっさん、それ言ったのもう12回目」
「そうだっけぇ?私の愛しき虚の為なら百万回だって言えるさ」
そう放つと、思いっきりの抱擁を虚に捧げる。
「うわっ!やめろよおっさん!気持ち悪い!」
「母さんならいいのに私だと駄目なのか……」素直にしょんぼりした犀霞は、ようやく家に返すことを決意したようだ。
そして車に乗り込もうとした、
その時。
「ただいまー」
荘厳な藤堂家には不似合いな、あどけない可愛らしい声が響き渡る。
「あ〜〜〜〜〜〜〜!!!虚お兄ちゃん!!」
マッハ5はあろうかと言う猛ダッシュで虚の胸にスライディングを決めるのは。
虚の姪で、犀霞の一人娘の、
藤堂ひさぎだった。
「もうぱぱったら!!虚お兄ちゃんが帰ってきてるなら早めに言ってくれれば夢歌ちゃんと遊ぶの断ったのにぃ!!」
可愛らしく頬を膨らませるひさぎに、周りにいる禅や優大までもが破顔一笑した。
「ごめんなひさぎ、俺もう帰るからさ」
ぎこちない笑みを浮かべながら宥めても、ひさぎは虚の手を離そうとしない。
「えええええええ!!どーして帰っちゃうのぉ!ひいちゃん、もっと虚お兄ちゃんと一緒がいいもん!!」
「ひいちゃん、いつまでもそうしてると虚が大変だろ?帰らせてやれよ?な?」犀霞が父親らしく語りかける、
「また冬になったら来るから、な?」
「………ばいばい」
こうして、藤堂家での慌しい一日から、解放されることになったのであった。
はずだったのだが。
【工房にて】
「ただいま……」
「うっつろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」先ほどのひさぎのような可愛げなど、微塵も感じられない声が工房内に木霊す。
案の定、例の城ノ内源である。
そして先ほどの虚の母やひさぎを凌駕するほどのもの凄い勢いで虚を強制的に抱きしめた。
本日三回目の抱擁。
「ああもう待ってたんだよ虚お前がなかなか帰ってこないからどうしたのかなって俺心配になっちゃってマジで愛してるぜ虚!!!」
「痛いから…つかとっとと離しやがれこの金髪眼帯ヲタク!!」
「愛してるに関しては否定しないんだね!」
「お前何処までポジティブなんだよ……!」
「まあいいじゃないか」
「源、とりあえず離してくれ」
「久々に名前で呼ばれた気がする」
「黙りやがれ!いい加減離せっつーの!!」
「はいはーい」
「良かった……」
「今度は文句言われる前に押し倒すぞ」
「いい度胸じゃないか」
そんな二人の様を、優大と禅は細目で見つめるばかりだった。
「僕最近、虚がただのお節介な馬鹿にしか見えなくなった」
「沢村副か…じゃなくて禅さん、俺もだよ」
「分かってくれるか優大」
「あれ、拓夢は?」
「……嫉妬しちゃったんじゃない」
END