BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

第五十七話・・・アルカリックスマイル ( No.378 )
日時: 2012/02/18 19:43
名前: マッカナポスト ◆dDspYdvRLU (ID: EAhWcc2P)
プロフ: 新作の内容決定しました

人生においての目標をよく『道標』と揶揄するけれども、自分自身どういう道を歩んでいいのか分からない事の方が多いような気がする。だがしかし、その場合の道標はどんな道標なのだろうか。
危険信号でも灯っているのだろうか。

そうなのであれば。
道標を頼りに生きていることなど、何の意味も持たないのではないか。


そんな博打打のようなレール上で、僕たちは足掻きながら必死に歩んでいるのだろうか。


部屋に積まれた参考書も、B5ノートに描かれた拙いイラストも、記念写真に刻まれた、これからも共に歩み続けていくであろう親友も、同僚も、兄弟も、両親も。

全て博打打の一部としかならないのだろうか。
失ってしまう事の方が幸せなのだろうか_____









拓夢は明らかに動揺していた。
「そんな……どの道を歩むかなんて自分でなんて決められな__」
「管野__優大に甘えているだけじゃないのか」
「ちっ、違う!僕は自分の意志で立ち上がってきたんだ、だから__」
「だったら今のお前は何なんだよ?優大の工房に居続けたいとか思いながらも中途半端にメイドなんてやって、俺の意見に流されて」

何も言葉が出なかった。
主導権は完全に真織が掌握していた。

「わかんないよ……自分が何をしたいかなんて、はずれくじばっかりの世の中で生きていくのに合理的な術なんて」
「違う、お前は世の中の事なんて考えてないし、自分が何をしたいかなんて分かるはずないだろ」
「なんでそんな事……お前に言われなきゃいけないんだよ」
「何をしたいか考えようともしてない癖に」
「_____うるさい」


「拓夢、お前は結局、自分の事しか考えてないじゃねえか」





「うるせぇっつってんだろ!!!!」





拓夢の鋭い罵声がほぼ無人のファミレス店内に響き渡った。


「だったら真織!お前は分かるのかよ!僕の苦しみが!人生が!僕の!お前のこれからの道標が!只の友達にいちいち言われる筋合いなんて無ぇんだよ!」
耳鳴りがするほどの罵声が真織をつんざく。


「分からねえよ」ぽつり、と真織は微かなる笑みすら浮かべながら呟く。
「聡明なお前が分からねえんだったら、俺なんて分かるはずないだろ」

「だったら何で___」
「分からないから、幾つもの選択肢を、お前に与えるまでだろ」
「…………」
「お前が思っている以上に、お前の事を大切に想ってる奴がいるってことを忘れるなよ……」
「真織__!」

「あと契約終了まで何日だ?」
「一か月」
「だったら『あの事』は辞める前までに必ず伝えておけ」
「そんな……それじゃあ僕が…………!」
「それまでに自分に最も大切なもの以外は、最大限に削るんだな」
「大切なもの___」





そう言った途端、真織が唐突に席を立った。
そして、支払いを終えた真織は、入り口の扉の前で一言言い放った。





「人間以上に大切なものがあるんだったら、だけどな」