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BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- 第十七話・・・額縁の貴方と絵の僕 ( No.53 )
- 日時: 2011/01/10 19:55
- 名前: マッカナポスト (ID: OtIMiKLW)
下町情緒溢れるこの町は、どんなに「ならないで」と願おうと来てしまうのである。闇に生きる者たち、そして愛に溺れる者たちの願いなど、聞き入れてくれるはずも無い。
____________________朝は。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
店は、驚くほど静まり返っていた。
二人の人間が、背を向けながらひたすらに陶芸品を作っている____
のではない。
ただただ、空ろな表情で頬杖をつきながら、物思いに耽っているのだ。
長い黒髪の青年は、泣き腫らしたような瞳を床の方にやり、その指は何かを求めるように机を撫でている。
同じく黒髪の眼鏡の青年は、薄笑いなのか、涙が溢れそうなのか、心の読み取れない表情のまま、2ショット写真を見つめている。
________________二人とも、同じ人を想いながら。
『夜明け前』で有名な島崎藤村(1872〜1943)が詠った詩の中で、『初恋』というものがある。
_______まだあげ初めし前髪の 林檎の元に見えしとき 前にさしたる花櫛の 花ある君と思ひけり
やさしく白き手をのべて 林檎をわれにあたへしは 薄紅の秋の実に 人こひ初めしはじめなり
わがこころなきためいきの その髪の毛にかかるとき たのしき恋の盃を 君が情に酌みしかな
林檎畠の樹の下に おのづからなる細道は 誰が踏みそめしかたみぞと 問ひたまふこそここひしけれ・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・刹那。
「________________あのさ・・・・・」
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