BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

第二十一話・・・赫奕たる輝き ( No.75 )
日時: 2011/02/01 19:44
名前: マッカナポスト (ID: qNIh9ax1)

先程まであんなにも降っていた雪は既に止んでいて_________

古びた工房の中は恐ろしいほど静寂に包まれていた。
拓夢はただただ当たり前のように過ぎてゆく外を見つめることしか出来なかった。


拓夢の目には、下町情緒溢れる外の風景でさえ、非日常的に見えた。



静かに降り積む雪は、幻想的であって、かつどこか寂しげであって、終わりの見えない“迷い”の心を暗示しているようだった。

______まるで今の僕らみたいだ。拓夢は心の中で呟いた。










「仕事に・・・なってないよね」拓夢はまったく関係の無い話を、意味ありげに含み笑いして見せた。
「確かにな。俺最近バイト始めたもん」それにつられる様に、虚は投げ遣りな笑みを浮かべた。
「このままで良いのかな?お前らは一体、何のために此処に来たんだ?」優大がそっと呟く。
「_____________________」
「・・・だって、何も理由が無くて此処に来たわけじゃないだろ?」
「久々に・・・会ってみたかったからさ、虚ちゃんも誘って遊びに行こうとしたんだけど・・・・・。その直後の藤堂家の崩壊もあって、僕だけ優ちゃんの勤務先調べて・・・・・。で、今に至る感じかな」淡々と語る拓夢の表情からは、その真意を読み取ることが出来なかった。

「働こうって言ったのは・・・・優大、お前だろ?」虚の顔にはどこか同情の念が込もっているようで、優大は反論する気にもなれなかった。


光陰矢の如し、黄昏時の曇天の空ばかりが風のように過ぎ去っていく。


「おっ、俺さ、思うんだけど________一回この職場から離れないか・・・?」意を決した優大が重い口を開く。
「「はぁ?」」意味が理解できなかったのか、虚と拓夢は同時に頭に疑問符を浮かべた。

「っと・・・、分かりやすく言えば_________リストラ、か」
「っふ〜ん♪なかなかやるねぇ優ちゃん」優大の真意を悟ったのか、拓夢は真意を理解できていない虚を鼻でせせら笑った。
「なっ、何で今のこの状況でリストラなんだよ!?」虚が抑えきれない怒りらしき感情をぶちまける。
「虚ちゃん、解んないの?今この状況“だから”リストラなの。今が僕らの懺悔の時でもあって、リセットのチャンスの時でもある・・・。優大の代わりに真意を話しちゃうけど、・・・う〜ん、『一回頭を冷やしてまた戻って来い』ってことだ。分かった?」
「・・・・・・ぁぁ」もどかしそうに虚が返事をする。




________それから2日が経ち。

「じゃあ、僕は早めに別れを告げることとするよ。じゃっ」


わざとらしい笑みを浮かべながら拓夢は、悲しみを隠すかのように足早に優大達の下を去って行った。


愛する人をまた遠ざけてしまった・・・・。今の優大には“後悔”という感情しか無いのであった。