BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- 第二十二話・・・One more chance!! ( No.77 )
- 日時: 2011/05/08 14:10
- 名前: マッカナポスト (ID: kzjN7yPk)
______拓夢が足早に去っていったのには訳がある。
実際、優大が後悔の念を隠せなのにも拘らず、拓夢は未来の希望に満ち溢れた新社会人のような軽快な足取りで真昼の路地を歩いていた。
(・・・優ちゃんったら、このタイミングのリストラなんて、わざとなのかねぇ・・・)
閑静な下町にも拘らず、今日はスーパーがピンクで彩られていた。
背を屈ませながら歩くサラリーマンが溢れる、何時もの風景とは明らかに違う。たかがスーパーだというのに洒落た服に身を包む少女たちでごった返していた。
そう、明日はアインシュタインの誕生日の一ヶ月前・・・・もあるが、乙女たちの祭典バレンタインデーだったのだ。
早速近所のスーパーで材料を買いに行く拓夢。
_____優ちゃんはどんなチョコが良いかなぁ?
妄想に胸躍らせるその様は少女そのものといっても可笑しくない。
結局、ベターなチョコを作ることに決めた拓夢は、トッピングの材料を次々と籠に放り込んだ。
レジ担当の店員さんが拓夢にそっと呟く。
「逆チョコ、ですか?」
「・・・・まぁ、そんなもん・・・ですね」・・・違うけど。言える筈も無い。
「最近流行ってますからね〜」
他愛も無い会話に、自分の謎の孤立感を感じた拓夢であった。
「ただいま〜・・・・」誰も居ない虚無の空間に、独り挨拶。これ以上寂しいことは無い。
冷たい床に材料の入ったレジ袋を投げ捨てて、ソファーに倒れこんだ。
・・・・きっと今日は虚ちゃん、家に居るな。
質素な壁を見つめながら、ふとそんなことを思う。
____“一枚の壁の差”というものは大きいものである。
・・・・こんなこと考えてる暇は無い。チョコ作らなきゃ!
意を決した拓夢は、使ったことも無い女物のエプロンを身に纏い、徹夜でチョコを完成させた。
「ふぅ・・・・完成っ!」こんな極寒だというのに、知らぬ間に汗が噴き出していた。
______さぁ、明日は運命の日。最初で最後の起死回生のチャンスだ。
寂しげな壁を見つめながら、拓夢はそう自分に言い聞かせるのであった。