BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

第二十三話・・・官能的でかつ温かい貴方の瞳が誰よりも愛しく。 ( No.92 )
日時: 2011/02/11 15:43
名前: マッカナポスト (ID: ykFYs.DE)

東京に降り積む三度目の雪。灰色の混沌とした空を夢の世界に変えてくれる雪。・・・それが今の拓夢の最大の励みだった。


寒さで赤く染まった頬を両手で暖めながら、紙袋を握る手に力を込める。歩みを進めるごとに段々人気の少ない閑散とした街へと景色を変えていく。・・・・もうすぐだ。そう自分に言い聞かせた拓夢は紙袋の中を確認する。


刹那。


「拓夢」聞き覚えのある、単調ながらも芯の通った優しい声。・・・昔と全然変わってないな。

「虚ちゃん!」思わず声を高める。
「お前、生きてたのか」本人は冷たく言ったつもりなのだろうが、顔が明らかに綻んでいる。
「まったく相変わらず素直じゃないんだからさっ」たまらず拓夢も冷たい(ふりをした)口調で返す。
「あっ、虚ちゃんが珍しく髪縛ってる!」昔を懐かしむように拓夢は微笑んだ。
「悪いかよ」あくまでもそっけない態度を貫く虚。実際心の内がバレバレなのだが。
「うぅ〜ん!!やっぱり相変わらず可愛いなぁ♪」拓夢はプレゼントを前にした子供のように無邪気に微笑んだ。
「俺のことナメてんのか?」虚も笑顔を堪え切れなかったらしく、昔を思い出させる優しい笑みを見せた。


「で、その紙袋は?」虚が覗き込むように拓夢に言う。
「あぁっ、珍しく虚ちゃんに見抜かれたなぁ。これはね。。。。。」

紙袋の中に手を伸ばしたその瞬間。

「分かってるから。優大にちゃんと“待たせてごめん”っていうんだぞ?」そう囁く虚の姿は昔の姿そのものだった。
「分かってますよ、“店長”」
「じゃ、頑張れよ」寂しげな表情など一切見せず、虚はきびすを返した。





「ちょっと待って」



拓夢は虚の手を強く握り締めた。
「えっ・・・?」本当に驚いているようだ。いつもの官能的な立ち振る舞いとは打って変わって、まるで乙女のように瞳を大きく見開かせた。
「この鈍感。あんたの分が無い訳ないだろっ!?」拓夢は厭きれたように虚をじっと見つめる。


そっと袋の中に手を伸ばすと、虚に綺麗な包装紙で包まれた箱を握らせた。
「はい。これからも・・・・・・」


言いかけたその時。


「ありがと。」そう言って虚は拓夢にそっとキスした。


「俺からも、はい。」あたかも計算されていたかの様に(本人はただ渡し忘れていただけなのだが)拓夢にチョコを手渡す。
拓夢は微笑する。「俺らはマンネリ期じゃなくてマッタリ期だよね」
「虚ちゃんも優ちゃんにチョコ渡すつもりなんでしょ?」
「・・・・・・まぁ////」

「お互い、頑張ろーね。」そういって拓夢は立ち去っていった。


・・・・その言葉のせいで、虚はしばらく胸の高鳴りが止まらなかったという。


空はますます曇りを増していたが、二人の心は晴れ晴れとしていた。