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BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: だいすきをちょーだい /薔薇百合ノマ、雑食系短編 ( No.282 )
- 日時: 2012/08/04 19:44
- 名前: 刻鎖 ◆KokusaMmOM (ID: wqHv3UL/)
- プロフ: 衝動書き
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いつの間にか見覚えのあるあの部屋の隅に蹲っていた。なんだか知らないけど頬には滴が伝い、やっぱりなぜだか知らないけど嗚咽を上げて、私は別に悲しくも悔しくも嬉しくも怒ってもいないというのに、無様に泣いていた。
ただ、確かに見覚えは有れどこの部屋がいつ何をした部屋かまで的確に覚えてはいないし(まあ私が他人の家に上がりこむなんて、理由は決まってるんだけど)、勿論いつの男の部屋だったかなんて覚えているはずもない。なんとなく、懐かしさとはまた別な、変に嫌な気分。
————ああ。また、この夢か。
ぼんやりと思う。
そう、夢。こんなのただの夢でしかない。
最近毎日のように見るこの夢は、いつも同じ部屋ってわけじゃなく。時にヤニ臭い汚れた部屋だったり、時にどこかのホテルだったり、自分の部屋だったこともある。
もういい加減見飽きたんだけど。蹲って泣いている私の中で溜息を吐く。
「————、」
笑う。誰かが。
私は蹲ったまま顔を上げないからそいつが誰だかは分からないんだけど、そいつが今ピアノの前に座ってるってことは何だか知らないけど分かってる。ちなみにそいつはいつも同じ人物で、気がつけばピアノと一緒にそこにいる。多分こいつも私の知ってる奴だとは思うんだけど。
ピアノが鳴る。ちゃーん。響いた。
私はその歪な不協和音を聴いて目を覚ます。何故か瞳に一瞬だけ、ひらひらと舞う紫色の蝶々を映して。
あーあ、きっと今日も目覚め悪いなあ。
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