BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 【薔薇百合短編募集中!】 クリスマス企画 【オリ版権問わず】 ( No.15 )
- 日時: 2010/12/03 19:32
- 名前: あゆ ◆x/5HQXA.iA (ID: w3T/qwJz)
+.「静かな部屋にうるさい心臓」[1]
「グレイ!」
「あ?」
良く聞き慣れた声に振り返る。たった今までナツと乱闘していた(勿論エルザに見つからない様にだが)俺は、きっと思い切り顔をしかめた事だろう。
声の主——ルーシィは、息を切らしながらこう告げた。
「ねぇ今ミラさんから聞いたんだけど、蛇姫の鱗[ラミアスケイル]が大騒ぎしてるらしいわよ」
「……は?」
蛇姫の鱗、と言えば……あの兄弟子。他人に決して弱みを見せない兄弟子の姿を思い浮かべ、少し心配になった。……ってあれ?何心配してんだ俺は。というか何でリオンの事に考えが行くんだ俺。
一人で色々と思いを巡らせていたら、焦れた様にルーシィが声を発した。
「あの、何だっけ?リオンとか言う人が依頼を受けたらしいの。んで帰って来ない、って騒いでる」
胃がきゅっと縮こまった様な気がした。帰って来ない?あのリオンが?まさか。片手で造形魔法使える様な奴だぞ、アイツ。
考えれば考える程なんか心配になる。
「だから前同盟組んだ恩もあるでしょ?探すの手伝うってエルザが言って。六魔聖将[オラシオンセイス]討伐メンバーで探すって。行かなきゃ」
そうか、だからエルザが居なかったのかとかぼんやり思う。
ともかく、俺はルーシィにナツと一緒に引っ張られて行った。
*
「リオン様ぁぁ〜!」
現場に行ったら、案の定シェリーとか言う奴が泣いていた。俺だって正直泣きたい。でも泣いてる暇なんて無い。
早くリオンを見つけなきゃいけない。
「よし、手分けするぞ。グレイと私、ルーシィとナツだ」
エルザがてきぱきと指示を出し、俺達はそれに従って別れた。延々に続く様な森の中をひたすら走って、リオンって叫んで……。時間だけがたっていくのが妙に悔しい。
ぜぇぜぇと二人で息を付いていると、エルザが悔しそうな顔をしているのが見えた。くそ、と呟いてすぐエルザは姿勢をただす。
「早く見つけなくては……暗くなればますます危ない」
「んだな」
そう返して立ち上がると、また走る。——だが。
『妖精の尻尾[フェアリーテイル]のグレイ君とエルザさん?』
聞き慣れた声が頭の中に響き、俺とエルザは顔を見合わせた。
*
連絡をよこしてくれたのは、青い天馬[ブルーペガサス]のヒビキとか言う奴だった。リオンを見つけたのは、ルーシィとナツ。
付いた時にはシェリーがいっそう泣いていて、ただ緊張した。
リオンは、大勢の相手と戦っていたらしい。髪もくしゃくしゃで、ボロ雑巾みたいに傷だらけ。酷い有様だった。
あちこち出血してるし、左手が変な方向に曲がっている。
「酷い……」
ルーシィがぽつんと呟いた言葉を、俺は呆然として聞いていた。リオンがこんな痛めつけられている姿なんて、正直見た事無かった。ウルにしごかれて修行していた時だって、ここまで傷だらけでは無かったと思う。
ただ、自分の無力が悔しかった。
【To be next……】